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教育業界に変革を。グリー、アドウェイズ、リブセンスなど、インターネット業界で数々のビッグサービスを生み出してきたメンバーが集まるEdTechベンチャースタディプラス

長らく“教育分野”でのマネタイズは難しいと言われてきているが、「EdTech(エドテック)=Education(教育)+ Techno...
長らく“教育分野”でのマネタイズは難しいと言われてきているが、「EdTech(エドテック)=Education(教育)+ Technology(科学技術)」の分野で着実に成果を上げているスタートアップ、スタディプラス。少子化傾向が続く日本だが、実はここ20年間で大学の進学率は2倍に膨らむなど、進学を目指す子どもたちの意識が変化している。教育現場に求められることが多様化してきた中、なぜ彼らはイノベーションを起こせたのか?
あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──
17-09-15-Fri
長内 尊司(おさない・たかし)
スタディプラス株式会社 営業部部長
宮坂 直(みやさか・なお)
スタディプラス株式会社 For School事業部部長

長らく“教育分野”でのマネタイズは難しいと言われてきているが、「EdTech(エドテック)=Education(教育)+ Technology(科学技術)」の分野で着実に成果を上げているスタートアップ、スタディプラス。少子化傾向が続く日本だが、実はここ20年間で大学の進学率は2倍に膨らむなど、進学を目指す子どもたちの意識が変化している。教育現場に求められることが多様化してきた中、なぜ彼らはイノベーションを起こせたのか?

学習の継続支援という教育事業者の課題をいち早くキャッチ

2016年10月、第13回日本e-Learning 大賞(最優秀賞)受賞。輝かしい経歴をもち、国内のEdTech分野で先陣を切ってイノベーションを起こしてきたといえるスタディプラス社。事業のメインに構えるのは、学習プラットフォームの「Studyplus」だ。

学習総合サイト Studyplus(スタディプラス)

勉強内容を記録し、グラフで可視化したり、サービス内で勉強仲間を作って互いに励まし合ったりすることで、学習意欲を持続させやすい状況を作り出すサービス。今や270万人以上の学生が利用している。

同社の創業は、2010年5月まで遡る。株式会社クラウドスタディとして創業された同社は、代表取締役 廣瀬の教育に対する熱意のもと、継続学習を支援するサービス「studylog」のリリースを皮切りにプロダクトを進化させ続け、2012年に今の「Studyplus」の原型が誕生した。

昨年2016年には、学校・塾・予備校など、スクール事業者のための法人向けサービス「Studyplus for School」もローンチ。教師が生徒の学習進捗や継続状況を一元的に可視化して把握できるサービスである。

リリース当初から、代々木ゼミナールが導入し、今年は、学研グループ傘下の学研スタディエが導入と、順調に導入校を増やしている。

学習管理プラットフォーム Studyplus for School紹介動画

「少子化にともない、これまで以上に、学校や塾に学習管理が求められる時代になったことが大きい」

こう分析するのは、法人向けのFor School事業部 部長を務める宮坂だ。

「教育の現場では今、“いかに勉強を継続させるか”が重要な課題なんです。大学進学率が上昇している昨今では、塾や予備校に来ている生徒はかつてほど学習意欲が高い生徒ばかりではありません。何を教えるかももちろん大切なのですが、そもそも勉強が続かなければどれだけ教えても意味がない。授業を全くせずに、学習計画を立てる支援だけ行う塾も存在しているほどです。たとえば、30人の学習管理をするとなると、これまでは生徒1人に30分程かけて面談するしかなく、900分かかってしまう。これをインターネットとスマートフォンを活用してわずか30分で実現するのがStudyplus for Schoolです」

(左)長内 尊司氏(右)宮坂 直氏

For School事業は16年4月にスタートしたが、教育現場と密接なつながりがある同社だからこそ、どこよりも早く“いかに学習を継続させるか?”という現場の課題を察知できたのであろう。

最先端のアドテクを活用したサービスでマネタイズを目指す

一方、ToC事業、学習者向けのサービスである「Studyplus」が順調に成長を続けている要因は、“学習継続支援”という時代のニーズにマッチしたサービスだったからだけではない。広告によるマネタイズ手法を時代に合わせて変化させてきたことも、開発費用を捻出し、サービスを継続して成長させるために重要な要素だ。

「Studyplus」のようにユーザーに無料で提供するサービスは、事業継続のために法人側からの広告マネタイズは欠かせない。

Studyplusの営業部長 長内は、「本格的に広告事業を始めてまだ1年ほどだが、お客様には成果で満足いただけている」と語る。

「大学や塾・予備校は、これまで電車の中吊り広告や新聞広告など、オフラインでの広告展開がメインでした。しかし年を追う毎にデジタルシフトしてきている。それに合わせて我々も、単純なバナー広告から成果報酬型のアフィリエイト、いまではDMPを用いたターゲティング広告施策を展開できる機能を広告出稿主に提供しています」

ユーザーデータを用いたターゲティング広告の展開という高度な開発業務を支えるのは、グリーで『ドリランド』や『釣りスタ』の開発に携わっていた経験をもつCTOの齊藤をはじめとしたエンジニアチーム。

技術力が高いことで定評があるリブセンスカカクコムで数々のプロダクトを立ち上げてきたFor School事業部 宮坂からみても、「社内には優秀なエンジニアが揃っている」という。

しかし、長内が目指すのは、広告表示の一切ないサービスである。

「『Studyplus』は勉強アプリ。教育分野で商業的な広告が表示されるのは、私自身少し違和感があります。将来的にはアプリ内から広告と思われる要素をなくしていきたいですね」

教育業界出身者は少数派。実績よりも、教育業界への思いを重視

教育業界にはITを駆使したスタートアップが多数参入しているが、そのマネタイズの難しさ故、拡大基調にある企業は多くない。そのため、IT×教育の分野でチャレンジしたいと考える人の中では、「Studyplus」に興味を持つ人も多いだろう。しかし、教育業界での就業経験がない私でも活躍できるのだろうか──

そんな悩みを知っているかのように、長内も宮坂も、「採用には教育業界の就業経験は一切関係ない」と話す。事実、スタディプラスのメンバーには、教育分野での就業経験を全くもたないメンバーも多い。

実は宮坂と長内も、社会人として教育分野でキャリアを積んだ経験はない。

「学生の頃から将来は教育業界を変革したいと決めていた」と話す宮坂は、大学時代の4年間予備校の教壇に立っていたが、同時期にインターン生として株式会社リブセンスにも在籍。

そのままリブセンスに新卒入社し、転職口コミサイト「転職会議」を立ち上げ、5年ほど事業責任者を務めていた。

「私が担当した授業は定評があり、合格実績も良かったのですが、とても勉強熱心だけれど成績が伸びない生徒もいました。本人の能力の問題と諦める先生もいましたが、私は人の何倍も努力する生徒を見放すことはできず、授業以外でも無償で個別に教えたり学習計画を立てたりと、最も時間と労力を割いていました。しかし、この課題を私が一人の講師として解決するのではなく、全国の一人でも多くの生徒の努力を実らせたいと思ったとき、当時の私には解決する方法さえ見いだせませんでした。ただ、漠然と、これからはインターネットで、こういった課題も解決できるようになるのではと考え、まずはITの事業経験を積んで、いつか教育×ITに挑戦しようと、リブセンスにしました」

リブセンス退職後には、グルメサイト「食べログ」(株式会社カカクコム)でも新規事業責任者を務めた宮坂が、再び学生時代に夢を描いた教育分野に戻ってきたのは、30歳のときだ。

「30歳になった頃、著名経営者の相談にも乗っているという転職エージェントの方にキャリア相談して目が覚めました。『君のキャリアはこのままだとピークアウトする。1番情熱が持てる仕事をしなさい』と言われたんです。いまこそ、教育×ITに挑戦するタイミングだと思い、以前からスカウトを受けていたスタディプラスに話を聞きにいきました。昨今、映像授業やデジタル教材が増える中で、一切コンテンツを持たないプラットフォームは珍しく、興味を惹かれました。プラットフォームだからこそ、コンテンツに縛られず、生徒一人ひとりが抱える様々な課題を解決できると感じました」

一方の長内は、宮坂とは全く異なる経歴だ。新卒ではミシンの訪問販売を担当。数年続けた後、知り合いが創業したフリーペーパーの制作会社にジョインし、泥臭い創業期の営業も経験した。

その後、その会社が買収される形でアドウェイズにジョインし、ネット広告業界へと転身を図ることになる。全く教育分野での経験がなかった長内がスタディプラスへ加わったのは、自身の家族の状況や経験が大きく影響している。

「広告代理店で働いていると、どうしても自社メディアやプロダクトを持っている会社への憧れの気持ちがうまれるんです。お客様のサービスの支援だけでなく、やっぱり自分が好きな1つのサービスを大きくしていく体験がしたいな、と。そんなときにたまたまスタディプラスから声をかけてもらって、このサービスは面白い、と思い入社を決めました」

「それと、」と長内は続ける。

「実はスタディプラスに入社を決めたのは“ここで働いていることを自分の子どもに自慢したい”という気持ちも大きかったんです。私は高校を中退して大検で大学に進学しましたし、もともと勉強が嫌いだったので、当時『Studyplus』のようなサービスがあれば自分にはもっと別のキャリアの選択肢もあったのかな、とも思います。それに、教育分野での仕事は“社会貢献できる喜び”も大きいですね」

スタディプラスでは入社を希望する候補者の多くと、入社前に会食の機会を持つことも多い。面接だけでは伝わりきらないお互いの本音を理解し、会社と候補者の相性チェックを重要視するからだ。

教育業界は一般企業とルールや慣習が異なる部分も多いため、求職者の過去の社歴や実績よりは、これから教育業界をどうしていきたいのか?という候補者自身の展望が要だと彼らは話してくれた。

最先端技術とのかけ合わせでマーケット変革。総合学習プラットフォームを目指す

古くから存在する“教育”の世界は、情報化やグローバル化など時代の流れに合わせて、ITの導入や小学校の英語教育開始などと発展を遂げてきた。脈々と続く教育史が抱えていた問題点や弱点も、科学技術が発展した今だからこそ解決できることもある。

「教育業界は様々な社会課題を抱えていながら、インターネット化が進んでいないレガシーな領域です。だからこそ、インターネットで変えられる余地が沢山あります。例えば、『VR(Virtual Reality)を活用した教育』や『仮想通貨を活用した新しい奨学金』も生まれるかもしれません。ここまで大きな変革ポテンシャルがあるマーケットって、多くないと思うんです。それに今は、『Studyplus』と肩を並べるようなサービスはないと思っていますし、競合のことを意識する必要なく、 “100%の時間を顧客ニーズを満たすことに集中できる”という会社環境も魅力です」(宮坂)

競合サービスがないマーケットリーダーの状況でプロダクト開発する魅力は、「マーケットを作っている感覚を味わえること」だ。

「網羅的に大手の教育機関をカバーしているので、新しいサービスを市場に投下するとすぐに業界全体に広まって、瞬く間に市場のデファクト・スタンダードが作れるというのは当社で働く醍醐味。今の『Studyplus』は学習ログを残すプラットフォームにすぎませんが、いずれは、包括的な総合学習プラットフォームになっていきたいと思っています」(長内)

For School事業部の宮坂は、地方の塾を担当した際、高校生たちが世の中にどんな名前の大学があるのかすら知らず、志望校も明確になっていない現実を目の当たりにした。

「この現実を放っておけば、地方学生の未来は危ういのではないか」という想いが、今日のサービス開発を加速させている。

「『Studyplus』のアプリには数百万人という学生の学習データが残っているので、そのビッグデータを活用して、自分の高校の先輩がどんな大学に進学しているのか?目標の大学へ入学するにはどんな学習方法がいいのか?なども直近で取り組んでいく予定です。『学ぶ喜びをすべての人へ』がスタディプラス社のミッションですから、こうした地域的な格差や、経済的な格差、様々なハンデキャップの能力的な格差を、インターネットを活用してひとつずつ解決していこうと思っています」(宮坂)

少子高齢化が進み、より1人1人にマッチした学習支援が求められる中、そしてグローバルで人材競争が激化し、高度な知識を身につける必要がある中、先陣を切って教育業界の変革をリードするスタディプラス。さらなるイノベーションが、まだまだここから生まれていきそうだ。

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あの注目のスタートアップは、どのようにして生まれ、いま何を目指しているのか──