連載FastGrow Conference 2021

目的は「時間を買う」こと?
あのスタートアップが資金調達を決めた理由

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登壇者
栗山 規夫
  • PRONI株式会社 代表取締役 Founder 

1980年北海道生まれ。大学卒業後、三菱商事株式会社を経て、2004年株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社。2005年Eコマース営業部長、2007年ECビジネス部長、2009年同社執行役員を経て、2011年に見識を広げる為に独立。専門のIT・インターネット業界に限らず、大企業からスタートアップまで幅広い分野でコンサルティングや共同プロジェクトを経験しました。

西川 真央

2010年よりP&Gマーケティング本部にて勤務。2012年に独立し、EC事業などを行う会社を創業。その時に発生した課題を解決するべく、当初は自社ツールとしてLOGILESSの開発を始める。その後、事業化を進め、2017年に株式会社ロジレスを創業。「物流危機からECの未来を守り、進化させる」というミッションを掲げ、LOGISTICS INNOVATION STARTUPとしてEC物流の課題解決を目指す。二児の父であり、家庭では料理担当。2019年のIVS、Incubate Camp、B Dash Campにてピッチ登壇。

細川 慧介

一橋大学社会学部卒。2010年株式会社リクルートに入社し、リクルートグループの経理を担当。2012年からは、株式会社リクルートホールディングスのIPOプロジェクトに従事。2014年からは、株式会社リクルートホールディングスの投資マネジメント室にてM&A、グループ再編等の社内FA及びRecruit Strategic Partners取締役として、リクルートグループのCVCファンドの企画・運営に従事。その後同期である竹内の誘いで、Monoxerに入社。

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メディアやSNSで話題となるスタートアップの資金調達。華々しく見える一方で、事業成長の裏側では着実な成長戦略が描かれている。

2021年1月に開催したFastGrow Conference 2021。DAY2におけるセッション「大型調達を実現した注目の急成長スタートアップが語る、今後の成長戦略とは」では、計算された事業戦略を元に着実な資金調達を行う3社が登壇した。

登壇したのは、BtoB受発注プラットフォーム『アイミツ』を手掛けるユニラボ代表取締役CEO栗山規夫氏、EC物流効率化のための自動出荷システム『LOGILESS』を提供するロジレス代表取締役西川真央氏、記憶の定着に特化した学習プラットフォーム『Monoxer』を提供するモノグサCFOの細川慧介氏だ。

資金調達を行った理由や投資家による評価、今後の成長戦略など資金調達後の姿に迫った。

  • TEXT BY OHATA TOMOKO
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メンバーに、ビジョンが叶った姿を見せたかった

初めに話題に上ったのは、資金調達をするという意思決定についてだ。自己資金で経営し続けるスタートアップもいれば、早々に資金調達をしてグロースを狙うスタートアップもいる。

登壇した3社はいったいどのような理由で資金調達に踏み切ったのだろうか。

最初に語り始めたのは、ユニラボ代表取締役CEOの栗山氏。同社は、2012年に創業し、2019年6月に初めてニッセイ・キャピタル9号投資事業有限責任組合からシリーズAラウンドの資金調達を行った。その1年後にシリーズBラウンドを完了し、累積21億円の調達を行った。「受発注を変革するインフラを創る」というビジョンを掲げ、上場に向けた事業成長への施策の数々を推し進めている。

栗山創業から4~5年の間、メンバーが40~50名に達するまでは自己資本で経営していました。

しかし、外部から資金を入れて経営するのとしないのでは、圧倒的に成長のスピードが違う。今いる全員が5年、10年と働き続けられるとは限らないなかで、せっかく「受発注を変革するインフラを創る」というビジョンに共感して一緒に働いてくれているからには、達成した姿を見せてあげたい。それができないのは不義理だと思うようになり、やるからにはスピーディーに上場まで狙うことを決断し、180度方針を変え、資金調達を行いました。

ロジレス代表取締役の西川氏。創業から3年後の2020年11月にシリーズAラウンドで、5億円を調達した。

2019年に発表したシードラウンドの5000万円と合わせた累計5億5000万円の資金調達の背景には「顧客に対する価値提供」と「市場環境に対する考え方」があるという。

西川例えば社内チャットツールは、万が一システムがストップしても電話やメールなど代替手段があります。しかし、我々が提供するのはそうではなく、替えのきかない基幹システムです。お客様のEC事業者や倉庫事業者の受注管理や自動出荷などコアな部分に携わるため、このまま小さく経営を続けて万が一のことがあった場合、お客様のビジネスに毀損を与えるリスクがありました。

また、市場環境を見たときに、競合やより良いサービスが急成長するリスクは常に存在しています。

だから資金調達の狙いは、プロダクトのシステム基盤構築と進化を進めて急成長するための時間を買う、ということでした。

モノグサCFOの細川氏は、2016年に竹内 孝太朗氏と畔柳 圭佑氏の2人が共同で創業。2年後に細川氏が参画し、2019年12月にシードラウンドで総額1億円、2020年10月にはシリーズAラウンドで総額4.4億円と、累計5.4億円の資金調達を行った。

細川モノグサは顕在化している課題を解決すると同時に、「記憶を日常に。」という長期のビジョンに繋げていくことを大切にしています。また領域的にすぐに売上や利益が出るようなものでもありません。

僕がジョインした際プロダクトができたばかりで、売上もほぼない状態でしたが、将来性は感じていたので、シードでの資金調達を行いました。

また、シリーズAの調達を行った2020年は、コロナ禍で教育のデジタル改革が注目されました。『Monoxer』はがプロダクトマーケットフィットしたタイミングだったので、より成長させていくために資金調達を行いました。

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VCや外部株主に「デメリットなどない」

資金調達については時にそのデメリットも語られる。頻繁に挙がるのは、VCや経営に関わり思い通りにコントロールできない、上場準備にリソースがかかるなどだ。

しかし、3社ともに資金調達によるデメリットはなかったと明確に語る。

西川資金調達前は怖かったですね。株主がどのような関わり方をするのかわからなければ、VCのスタンスも様々です。

でも、結果的にやってみてすごく良かった。弊社の場合は、VCによるサポート体制も整っていて、一緒にビジョン達成を目指す仲間のような感覚です。もし、資金調達後にここまで成長スピードを加速させられると分かっていれば、もっと早くやりたかったですね。

栗山腹を決めて資金調達を行ったので、デメリットは感じませんでした。ただし、弊社はデットの借り入れも相当行っています。当然ながら返済義務がありますので、そこはかなり勇気が入りました。

よく、株主にいろんなことを言われて思うように経営できないといったイメージを持たれることも多いですが、そんな事はありませんでした。ビジョンを共有出来ていると感じる為、同じ目線でアドバイスをくれる良きパートナーとしてサポートいただいています。

 

モノグサの細川氏は前職で投資側の経験もあったことから、より客観的な目線で、調達の狙いを改めて語った。

細川ビジョンから逆算して、調達は必要だという認識でした。最初の資金調達を行うにあたり、創業者の二人と僕で「事業をどこまで伸ばしたいのか」について話し合いを行ったんです。「グローバルでプラットフォームを創りたい」という明確かつ大きなビジョンがあったので、資金調達を行う道を選びました。

デメリットについてはそこまで感じていなくて。というのも、僕は創業から2年後にモノグサに参画、つまりどちらかというと創業メンバーと比べれば外部のVC寄りの立場で、経営に携わってきました。そのため、VCが経営に入ってきても、大きな変化を感じることはなかったです。

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“よく分からない将来性”と“ファクトに見る成長性”

資金調達の際に気になるのが、投資家による評価ポイントだ。大型資金調達を達成した3社は、どのようなポイントが投資の判断につながったと考えているのだろうか。

細川氏はシードとシリーズAの違いに触れながら、自社が評価されたポイントを振り返る。

細川シードでは、UB Venturesの麻生さんから「サービスはよく分からない。だけど、みんなが良いといっているものより、分からないもののほうが可能性があるよね」と言っていただきました。リスクを取って投資していただけて、非常に感謝しています。

シリーズAでは、短期間での売上成長や、プロダクトやチームの評価をいただきました。また、市場環境もコロナの影響で大きく変わりました。塾や学校などでデジタル教育に対する意識が追いついてきたこともあり、今後の成長性が評価されたと捉えています。

西川氏はサービスの着実な成長や、マーケットの自体の拡張性を挙げた。

西川我々が展開している自動出荷システム『LOGILESS』はEC事業者と倉庫事業者が1つのシステムを利用する仕組みで、双方の生産性を上げるプロダクトですが、直接競合が存在しないということあり、投資家もちょっと評価しにくいという面があります。その前提をもとに、KPIの達成やチャーンが低いこと、売上や顧客数などの点でグロースできていることなど、可視化されているファクトから事業の強さを評価していただきました。

また、マーケットの拡張性も評価の対象になっていています。単なる顧客満足だけでなく、インフラとして課題解決できる余地がある面も、評価ポイントにつながっています。

栗山氏は「コロナ禍でもしっかりと売り上げを伸ばし続けられている」点が大きかったのではと語る。

栗山もともと2020年の4〜5月にシリーズBファイナンスのピークを持ってくる予定でしたが、コロナにより計画がくずれました。それでも蓋を開けてみたら、コロナが追い風にもなり、売上は順調に伸びていたんです。

また、サービス自体も5〜6年やっているため、KPIの達成は比較的安定させることができています、この点も投資家からの評価につながっていると感じています。もちろん、ビジョンに対する山の登り方や、現状の課題説明に対する回答などもしっかり準備していたので、一定の評価を得られたのだと思います。

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採用は倍増で、プロダクトを進化へ

資金調達を終え、さらなる急成長を狙う3社。今後の事業戦略をどのように描いているのだろうか。

栗山氏は、新規事業の立ち上げやアイミツシリーズの拡大を掲げた。

栗山現在は、受発注プラットフォーム『アイミツ』のみに取り組んでいますが、今後は大企業にもご利用頂けるような、SaaS型の受発注サービスの立ち上げを行い、アイミツシリーズを拡大していきたいです。

当然ながら、プロダクト設計には多くのメンバーが必要です。なので、2021年はこれまでの2倍以上採用を行う予定です。受発注に課題感を感じている方や何かをやり遂げる経験をしたい方はぜひ来ていただきたいです。我々は誰と働くかを大切にしているので、採用を行う際は現場のマネジメントクラスや同僚にできるだけ会ってもらっています。ぜひこの人と一緒に働きたいと思っていただければ、嬉しいです。

西川氏は、EC事業者や倉庫事業者の生産性向上に取り組みたいと語る。

西川ありがたいことに、お客様のお問い合わせが多数来ているのですが、現状のメンバーだけでは対応しきれません。大まかな成長戦略が見えているので、目標の実現に向けて組織を拡大させていきたいです。マッキンゼーが2020年に発表している調査では「現在のGDP成長率を維持するためには、生産性を2.5倍向上させる必要がある」という調査結果も出ていました。ロジレスは「ECロジスティクス」の領域で日本の生産性向上に取り組んでいるので、もし日本の生産性を良くしたい、お客様に喜んでもらうことを大事にしたいと考えているメンバーがいれば、ぜひ一緒に事業成長に取り組みましょう。今後のスケールを考えた上で仕組み化を実現させたり、事業戦略についてディスカッションできるメンバーを求めています。

『LOGILESS』は、SaaSビジネスです。当然ながら、お客様と長く付き合う必要があります。お客様が抱える現状の課題を抽出し、より良いプロダクトをつくるマインドセットが大事だと感じています。そして、このプロダクトによるライフタイムバリューに特化するだけでなく、日本の生産性向上や人工減少における課題解決など、広い視野で業務に取り組むことへ共感できる人がマッチすると思います。

細川氏は、教育に携わる方々の学習の仕組み改善に向き合いたいと語る。

細川事業をやっていると、良くも悪くも思い通りにいかないことが頻繁に発生します。特に、コロナ禍でこれまで見えてこなかった課題もたくさん見つかっています。西川さんが語っていたように、我々も現場の課題を抽出しては、モノグサで解決できることは何か?と考えてそれを見極め、メンバー全員でプロダクトに反映しています。最終的には、教育に携わる方々がモノグサを使うことで、やりたい学習をご自身で実現できる仕組みを作りたいです。

もちろん採用も強化しています。我々は現在、教育領域で事業を行っていますが、教育に対する興味関心はそこまで重視していません。あくまでMonoxerというプラットフォームを通じて事業を作ることに興味関心がある人、その過程で、頭も手足も動かせる人に来ていただけると嬉しいです。

こちらの記事は2021年03月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

大畑 朋子

1999年、神奈川県出身。2020年11月よりinquireに所属し、編集アシスタント業務を担当。株式会社INFINITY AGENTSにて、SNSマーケティングを行う。関心はビジネス、キャリアなど。

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