「スタートアップの真似事が大企業の進化を止める」
DeNA出身のRelic北嶋氏が提唱する、大企業に必要な新規事業開発のメソッドとは?
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「オープンイノベーション」「アクセラレーションプログラム」「新規事業開発」……これらの活動が目立つ反面、戦略なき施策に空虚さを感じてしまう側面もある。
そんな中、企業と向き合い、「新規事業開発に必要なプロフェッショナルとテクノロジーを提供する事業共創カンパニー」がある–––北嶋貴朗氏が代表取締役を務める、株式会社Relicだ。
本企画では北嶋氏に「従来の新規事業開発の問題点」をテーマにインタビューを敢行。自身が起業家/事業家でありながら企業の新規事業開発を支援する立場でもある同氏からは、「IRM(Innovator Relationship Management)」「インキュベーションテック」といった、大手企業のイノベーションに再現性を生むために必要な考え方やフレームワークがしきりに飛び出した。
- TEXT BY MONTARO HANZO
- PHOTO BY TOMOKO HANAI
- EDIT BY MASAKI KOIKE
コンサルティングファームに「本当の新規事業開発支援」はできない
Relicは、北嶋氏が2015年に創業した。「日本発の新規事業やイノベーションを共創するプラットフォームとなり、日本経済と地域を活性化する」をミッションに掲げ、自社のプロダクトやサービスを立ち上げながら成長。これまでに500社以上の企業の新規事業開発に携わってきた。
彼らの主要事業は、大きく3つある。
1つ目は「Throttle(スロットル)」や「ENjiNE(エンジン)」をはじめとした、新規事業開発やオープンイノベーションの支援に特化したSaaS型のプラットフォームやテクノロジーを提供するインキュベーションテック/プラットフォーム事業。
2つ目が、ハンズオンで新規事業開発やオープンイノベーションの戦略立案〜実装・実行まで支援するソリューション事業。戦略や事業企画のレイヤーだけでなく、プロダクト開発・サービスデザイン〜マーケティングや営業など、アイデア創出〜事業性検証/PoC、事業化〜軌道に乗るまでのグロースを一気通貫で支援している。
3つ目が、インベストメント・アライアンス事業だ。Relicが有望視しているスタートアップへの投資、育成を行ったり、事業パートナーとしてアライアンスによる共同事業開発やJV(ジョイントベンチャー)の設立などを通じてレベニューシェアモデルでの支援を実現する。
社内でイノベーションを生み出すための「土壌の整備や文化の醸成」から戦略の立案、そして実務面でのサポートや必要になるテクノロジーやリソースの提供まで。新規事業開発のすべてを担うのが、Relicという会社だ。
北嶋氏が現在の事業構造に辿り着くまでには、これまでのキャリアで感じた「新規事業開発」や「オープンイノベーション」への課題意識があった。話を伺うなかでまず印象に残ったのは「コンサルティングファームに、新規事業開発支援はできない」という言葉だった。
北嶋日本で「新規事業開発」と聞くと、相談相手としてコンサルティングファームといった外部の支援会社が真っ先に想起されてしまいがちです。しかし、コンサルティングを始めとする大半の支援は、外部の立場や視点から「戦略立案」などの特定の機能を提供するに留まってしまい、事業の立ち上げや成長といった目標にコミットしているわけではありません。
しかし、不確実性の高い新規事業開発においては、事業戦略や企画の立案だけでなく、事業性や仮説を検証するためのテストマーケティングやテストセールス、スピーディなプロダクト・サービス開発・改修など、泥臭いエグゼキューションを高いレベルで行えるかどうかが成否を分けます。むしろ、エグゼキューション能力やそれを備える組織のケイパビリティによって、取り得る戦略のオプションが規定されてしまうといっても過言ではありません。
さらに、それを外部からの視点だけでなく、経営者や事業責任者としての当事者意識やオーナーシップを持って強力にチームをマネジメントしながら事業を推進していく必要がある。そのため、外部からの部分的なコンサルティングや支援だけでは、できることは限られてしまうのです。
コンサルタントや支援者を名乗る人の多くは、「新規事業開発の責任者やリーダーとしての実務経験に乏しく、事業や人を実際に動かすことの難しさを知らないことが多いのが実情」と北嶋氏は語る。
しかし、企画を実行するためには、メンバーに説明して共感を得ることや他社との連携など、現場にしか見えない苦労もたくさん存在する。「それらに寄り添えず、地図を描くだけの第三者では、新規事業を成功に導けない」──北嶋氏はこれまでのキャリアで、どのような存在が新規事業を成功に導くのか、自問自答を続けてきた。
北嶋例えば、新規事業における次の一手を検討している際、コンサルタントや支援者にできるのは、実行するプランの選択肢を与える幅出しと、「その中でも、プランAがオススメです」という推薦・提案まで。しかし、Relicの場合は自社でも多数の新規事業開発やオープンイノベーションに取り組んできた経験を踏まえ、当事者意識を持った強い意思提示ができます。
さらに、クライアントに先んじて施策を実行してみたり、うまく行かなくても次に活かすべく、自社で仮説検証を行い、次のプランを考えることもあります。場合によっては自社でリスクを取って事業に投資したり、成果報酬型で事業成長を支援する「共創」に至ることもあるんです。
Relicではこうした、当事者意識を持って新規事業開発や支援を行える人材を「事業プロデューサー」と定義している。また、スピード感が求められる新規事業開発における落とし穴として「部分最適」に陥ってしまうことを挙げ、独自に培ってきた組織論を提示する。
北嶋弊社のもう1つの特徴として、「少数精鋭」があります。新規事業開発における失敗としてありがちなのが、ステークホルダーやパートナー企業が増えることで、各々が「部分最適」を追求してしまい、プロジェクト内のコストが高まってしまうこと。Relicでは、全体の最適化を意識しながら、スピーディに戦略と実装を行き来できるレベルの高い人材を、必要な箇所にアサインする少数精鋭主義をモットーとしています。
新規事業開発を「上流から下流まで」支援する集団が、日本には必要だ
北嶋氏は、新卒入社で人事系コンサルティングを手掛けるベンチャー企業を経た後、新規事業に特化したコンサルティングファームで過ごした。その過程で、企業の支援だけでなく自社の新規事業開発を手掛けての早期黒字化、HR領域のバーティカルメディアの立ち上げ〜事業売却を経験。さらに、大企業の新規事業開発において、ゼロから立ち上げた事業を毎月2,000万人以上のユーザーが利用する規模までグロースさせる立役者となった。
Relicを創業する前に最後に勤める会社として選んだIT系メガベンチャーの株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)では、主にEC領域を中心とした新規事業開発の責任者を歴任。大手小売業とのオープンイノベーションを通じて立ち上げた新規事業では、ローンチから僅か1年で数十億円規模の流通金額を実現した経歴を持つ。
これまで「コンサルタント」と「事業責任者」の双方を経験し、その視点を取り入れることで、再現性の高い真の意味での「新規事業開発と支援の在り方」を模索してきたのだ。
北嶋日本でのイノベーション創出を底上げするには、クライアントに寄り添い、新規事業開発を上流から下流まで支援する存在が必要なのではないか。その課題意識のもと、立ち上げたのがRelicでした。
私たちが目指しているのは、外部からの部分的な支援や自社リソース/サービスといった「手段」の提供ではありません。新規事業やイノベーションの共創という「目的」に対してコミットする「事業共創カンパニー」です。その理想を実現するために、100名以上の多様性に富んだメンバーが、目的や課題に応じた柔軟なソリューションを提供できる体制を構築しています。
大企業は「スタートアップの真似事」をしても意味がない
大企業のクライアントやパートナーの新規事業開発支援を多数経験してきた北嶋氏は、日本企業の新規事業開発における問題点の一つとして「スタートアップの真似事をしてしまうこと」を挙げる。
もちろん、新しい事業を立ち上げるためにはスタートアップライクな環境が求められる側面もある。しかし、それに傾倒しすぎてしまい、置かれている状況や持っている資産などを踏まえた正しいアプローチができずに失敗してしまう事例をよく見かけると、北嶋氏は指摘する。
北嶋そもそも、大企業とスタートアップでは、「新規事業の定義や目線」が大きく異なります。大企業の場合、既に大きな収益を生んでいる本業が複数あることも珍しくないなか、新規事業は既存事業とのシナジーの有無などがチェックの対象。とりわけ上場企業では短期的な成果をシビアにチェックされることも多く、求められる事業規模の水準も高くなりがちです。数十億円〜百億円以上の規模になり、かつ利益を生んで初めて事業としての価値を認められるという企業も少なくありません。結果として、そこに至る可能性が低い、もしくは時間がかかりすぎると判断された場合は、事業化を諦めたり撤退を余儀なくされてしまうことが多いんです。
一方で、スタートアップは本当にゼロからの立ち上げなので、既存事業との兼ね合いなどは存在せず、ほぼ単一事業・プロダクトのまま経営していくことも珍しくありません。また、近年は資金調達環境の良さも相まり、事業規模が大きくなくとも将来性や成長性が認められたり、KPIが健全に成長したりしていれば、赤字が続いていたとしてもイノベーティブな挑戦を継続できる可能性も高くなってきています。
事業規模についても、数億円〜十数億円程度、もしくは利益を生まない赤字のままであっても、IPOやバイアウトによってイグジットができれば成功と見なされる部分もある。大企業とは、さまざまな前提から異なるのです。
こうした違いを理解せず、スタートアップと同じアプローチを採用する大企業に対し、北嶋氏は「いずれ破綻してしまうのは必然」と厳しい視線を向ける。
北嶋しかし、日本の大企業にはスタートアップには無いアセットやリソースが山のように眠っています。徐々にトレンドは変わりつつありますが、先進国のなかでも未だにこれだけ大企業に経営資源が集中しているのは日本しかありません。
そうした特性を理解し、スタートアップ的な事業立ち上げのアプローチは参考にしつつも、大企業ならではの、自社の現状や特徴にフィットする考え方や手法を確立していくことが、大企業の新規事業責任者や新規事業開発をミッションとする部署・部門には求められるのではないでしょうか。
その企業にとって、新規事業の「目線や定義」はどうあるべきか、–––Relicでは企業ごとの「新規事業に取り組む目的や意義」に立ち返り、それらを最初の段階で策定し、言語化することを大切にしてきた。
例えば、その一例として「新規事業開発のアプローチ検討の指針(下図)」などがある。個々の企業の新規事業の「目線/定義」と「目的/意義」によって、採るべきアプローチを6種類に大別している。
北嶋自社の保有するアセットを活用し事業優位性の源泉に据える拡張型のソリューションで、既に顕在化している市場や顧客のニーズに対応して事業的な成果創出の観点に特化するケースを見てみましょう。この場合、市場や顧客との接点を直接持っている現場社員の意見を反映しやすい「ボトムアップ型」のアプローチが適している可能性が高いと考えます。
もし事業的な成果創出の観点だけでなく、中長期的に組織のメンバーに事業開発の経験を積ませたり、ノウハウを貯めていくことを通じてイノベーティブな組織・文化を創り上げていく観点を重視する場合においては、新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度を設計・運用して、社内を活性化させるのがベターです。
一方で、事業的な成果創出の観点に特化しつつ、自社のアセットが活用できない領域で顕在化しているニーズにスピーディに対応して事業を立ち上げる場合は、M&Aが適している可能性が高いと言えます。
これはかなり簡略化していますが、このようなフレームを活用しながらその企業にとって全社戦略の中で新規事業開発をどう位置づけるのか。また、新規事業開発において採るべきアプローチを検討・策定することの必要性を、まずはお話しさせていただくことが多いですね。何か一つに限定するのではなく複数のアプローチを併用することもありますし、そのバランスやリソースの分配こそが重要であり、企業ごとの特色が出る部分でもあります。Relicではこれを「インキュベーション戦略の策定」として注力して取り組んでいます。
わずか数%しかいない希少なイノベーター人材を活かす。Relicが手がける「イノベーションマネジメント・プラットフォーム」とは
新規事業の在り方を問い直し、最適な支援を提供する。このスタンスを貫いてきたRelicは今年、「イノベーションマネジメント・プラットフォーム」と銘打ち、新規事業開発やイノベーション創出の再現性を高めるためのマネジメントプロセスを一気通貫で支援する「Throttle」をリリースした。元々は「ignition」というサービス名でセミオーダーメイド形式で多くの企業で利用実績があったシステムを大幅にアップデートし、汎用的なSaaS型プラットフォームとしてリニューアルした。
Throttleで実現できることを端的に説明するならば「アイデア創出から事業化するまでのプロセスをすべて一元管理できる、“新規事業開発専用”のプラットフォーム”」。新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度、オープンイノベーションやアクセラレーションプログラムなど、「イノベーションの創出」に最適化された国内初のクラウドサービスだ。2019年度中にイノベーション・マネジメントシステムの国際標準規格がISOでまとめられる動きもある中で、益々需要が高まってきているという。
事業開発の手法や理論がいくら研究を重ねて進化しても、事業の成否はそれを担う人材やチームの力に依存している部分が大きいことは否めない。北嶋氏は様々な大企業やスタートアップ・ベンチャー企業の経営者を支援し、調査や分析、対話を重ねる中で、「新規事業やイノベーション創出に適した志向や資質を持った、イノベーター人材のポテンシャルを最大限引き出し、発揮しやすい環境や関係性を構築すること」が必要不可欠だと痛感。
そのために重要な考え方やフレーム、テクノロジーなどを網羅的・体系的に開発することを決断し、企業が社内外のイノベーター人材をどのように発掘・関係構築をして、どのような支援・関与を通じて事業開発を推進していくべきかを追求してきた。結果、生まれたのが、独自の概念「IRM(Innovator Relationship Management)」だ。
北嶋これまでに500社以上のクライアントやパートナーの新規事業開発を支援してきた中で独自に調査・統計を取ったところ、日本の大企業で働く人材の中で、新規事業やイノベーション創出に取り組むのに適した志向性や資質を兼ね備えており、かつ既に何かしらの挑戦や行動を起こしている「イノベーター人材」は2〜2.5%。志向性や資質を兼ね備えていながらもこれまで行動を起こすことができなかったが、一定の条件や環境が整えば行動につながる可能性が高い「イノベーター候補人材」が、5〜7%存在することがわかっています。
この数字は、特にイノベーティブな組織である一部の例外を除くと、大企業も中堅・中小・ベンチャー企業もそれほど大きな差異はないもの。つまり、社内だけでなく日本全体で見ても極めて希少性の高い人材であることがわかります。
そうではない残りの90%以上の人材に対し、いきなり「新規事業のアイデアを出せ」「新規事業を立ち上げろ」といっても、極めて難しいと言わざるを得ません。社内外の数少ない10%未満のイノベーター人材/イノベーター候補人材を適切にマネジメントすることこそが、新規事業開発やオープンイノベーションを推進していく上での鍵になるのです。
そこで考案して打ち出したのが、IRMという独自の概念でした。会社に新規事業が必要なタイミングで、社内外のイノベーター人材と適切な関係性を構築し、必要な関与・支援を行っていくことで、新規事業開発やオープンイノベーションを加速することできると考えています。全体戦略や前述のインキュベーション戦略を適切に実行していくためにも、IRMを徹底することが重要になります。
また、北嶋氏はIRMを浸透・徹底させるためのテクノロジーとして独自に開発した「インキュベーションテック」が、イノベーションを科学し、再現性を高めるための構造や仕組みを実現するインフラになるはずだと構想を明かす。
北嶋順序としては、全社戦略やインキュべーション戦略に基づくIRMの方針が定まっていることが大前提です。そこから適切な実行・推進を標準化し、イノベーター人材がポテンシャルを発揮できる環境や文化を会社全体に浸透させ、運用していくための「インキュベーションテック」を活用していくのが最適だろうと考えています。
Relicが現在提供しているインキュベーションテック関連サービスとしては、前述のイノベーションマネジメント・プラットフォームの「Throttle」、クラウドファンディング型テストマーケティング・プラットフォームの「ENjiNE」、グロースマネジメント・プラットフォームの「Booster」、イノベーター人材の発掘/タレントマネジメントに特化した診断ツール「the innovator's DNA」などがあります。
現在、前述の「インキュベーション戦略 × IRM × インキュベーションテック」という三種の神器を用いた新規事業開発やイノベーション創出への取り組みは、多くの大企業で実装され、成果に結びついている。
北嶋一例ですが、とある大企業では、インキュベーション戦略に基づきIRMの方針を策定し、社内イノベーター候補人材の発掘・活用のために新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度の設計・運用に注力することになりました。初の試みであったことや、イノベーター候補人材の挑戦のハードルを下げる制度設計などが奏功したことから相当な反響が予想され、IRMを高いレベルで実践できるかどうかの懸念が大きかったためThrottleを導入しました。
大企業の新規事業創出プログラムや社内ベンチャー制度では、3桁を超える事業アイデアが集まることも多くあります。そのため、一つひとつのアイデアやそれを提案してくれたイノベーター人材に対してのコミュニケーションやマネジメントが行き届かないことが多い。年々尻すぼみになってしまい文化や制度として定着しないことも多々あるんです。
しかし、この企業ではThrottleを活用することで、効率的に社内のイノベーター人材をマネジメントし、アイデアへのメンタリングやブラッシュアップを通じて事業プランの精度や実行スピードを高めることに成功。結果として事業化に至らなかったアイデアの起案者に対しても、適切なフィードバックやフォローを行い、類似のテーマやアイデアを検討している個人やチームとのコラボレーションやチームビルディングを促すなど、IRMを徹底して行いました。
これにより事業化が決定したアイデアやチームの質は高まり、事業化に至らなかったり落選したりする場合においても「なぜ自分のアイデアが事業化に至らなかったのか」を内省する機会を与えることで人材の成長を促しつつ、また別の機会や別のアイデアで再挑戦するモチベーションにも繋げることができました。
そこから正のスパイラルが生まれ、年々事業プランの量・質ともに増加。結果として制度やプログラムと関係ないところでのボトムアップ型の新規事業開発の動きが活性化しており、実際の成果に繋がり始めています。
また、Throttleをオープンイノベーションやアクセラレーションプログラムに活用することで、社外のイノベーター人材との関係構築やコミュニケーションを徹底するIRMを実践でき、多数の共同事業や協業案件に結びついている企業も出てきています。
「課題先進国」の日本には、新たな産業構造を生み出すチャンスがある
Relicは、今年リリースを果たしたThrottleを皮切りに、これからも大企業の新規事業開発支援に注力していく方針だ。「なぜ、大企業なのか?」と素朴な疑問をぶつけると、北嶋氏は日本特有の人材の動きに触れながら、「日本の大企業にしか起こせないイノベーションがある」と教えてくれた。
北嶋日本国内でもスタートアップ界隈が盛り上がりを見せトレンドは変わりつつありますが、まだまだ優秀な人材の多くは大企業に就職しているのもまた事実です。産業構造としても、日本企業の大半を占める中小・中堅企業の経営は大企業の基盤によって支えられている部分が非常に大きい。スタートアップが活性化するのは素晴らしいことですが、それだけでは日本経済に対するインパクトは非常に限定的になってしまいます。
やはり、大企業が変わり、大企業からイノベーションが生まれるようにならないと、本当の意味で日本がイノベーティブな国になることはできないのではないでしょうか。私は、その課題を解決することで、日本の大企業にしかできないイノベーションが起こり得る社会が実現できると確信しています。
北嶋いま、日本は先進国のなかでも少子高齢化を始めとした社会課題を多く抱えた「課題先進国」と呼ばれていますよね。一見するとネガティブなファクトに思えますが、「世界がまだ直面していない・解決できていない課題にいち早く取り組むことができる」とも考えられる。世界のロールモデルとなるイノベーションが生まれる可能性があるわけです。
近年、中国やアメリカから明確に遅れをとるなかで、日本国内全体に危機感が生まれてきています。新規事業やオープンイノベーションも「トレンドだから」ではなく、本当に危機感を持って取り組んでいる企業が増えてきました。ここから、日本が優位性を持った生存戦略へ、一気に舵を切る機運があると感じています。
社名であるRelicの意味は、「遺物」だという。これは、日本の文学者・伝道者である内村鑑三氏の著書『後世への最大遺物』の一節から取られている。内村鑑三氏が「勇敢にして高尚な生涯こそが、後世への最大遺物である」と語ったように、日本の将来を想い、イノベーションに挑み続ける勇敢なRelic社の生涯もまた、後世へ遺り続けるものになるだろう。
北嶋大企業の中で「何かを変えなければならない」と漠然と思いながらも、何をするべきか、何から始めべきかわからないという方がいたら、ぜひ一度お話してみたいですね。新規事業やイノベーションに特化してあらゆるソリューションや独自のメソッド×テクノロジーを持つRelicだからこそ提供できる価値が、必ずあると信じています。
才能がなくても、お金を持ってなくても、勇気を持って挑戦する姿勢そのものが、後世に続く挑戦の連鎖を生み出し続けると私は思っています。Relicは、どんな環境にあっても必死に打席に向かい続ける「挑戦者」が報われる社会を目指すために、挑戦し続けます。
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こちらの記事は2019年08月29日に公開しており、
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姓は半蔵、名は門太郎。1998年、長野県佐久市生まれ。千葉大学文学部在学中(専攻は哲学)。ビジネスからキャリア、テクノロジーまでバクバク食べる雑食系ライター。
写真
花井 智子
編集
小池 真幸
編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。
1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。
特別連載挑戦者と共創するインフラとなり1000の大義ある事業と大志ある事業家の創出を目指す
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