EVENT REPORT

学生起業するなら、成功した起業家が集うコミュニティに参加すべし。
テックピット山田氏×FastGrow編集長対談

コスメのコミュニティアプリ「LIPS(リップス)」を提供するAppBrew代表・深澤雄太氏や、ギフトECサイト「TANP(タンプ)」を運営するGracia代表・斎藤拓泰氏など、20代前半にして事業を急成長させ、大型の資金調達をするCEOが目立つようになってきた。

彼らの経歴に目を向けると、深澤氏はfreeeで、斎藤氏はCandleで学生ながらに勤務した経験を持っている。若くして起業家として成功するためには、彼らのように優秀な起業家との接点を持つ必要があるのではないか。

FastGrowは起業家を志す若者のハブとなるべく、LayerX代表・福島良典氏やXTech代表・西條晋一氏といった豪華アドバイザー陣を迎え、学生起業家コミュニティ「xGarage(クロスガレージ)」を2019年11月にローンチした。

2019年12月にはキックオフイベントをNagatacho GRiDで開催。会場にはxGarageに参加し、起業家を目指す学生たちが集まった。本記事では、イベント中のパネルトークの様子をレポートする。登壇したのは、CtoC型プログラミング学習サービス「Techpit」を提供するテックピット代表・山田晃平氏と、FastGrow編集長・西川ジョニー雄介だ。

山田氏は2018年4月に新卒入社したガイアックスから出資を受け、入社からわずか3ヶ月で起業。ほとんど学生と変わらない状態で起業を決めたといえる。ジョニーが山田氏の来歴を掘り下げ、起業家を目指す学生が積むべき経験を探っていく。

  • TEXT BY TAKUMI OKAJIMA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA

登壇者

山田 晃平 (やまだ・こうへい)

株式会社テックピット CEO

山田 晃平

やまだ・こうへい

株式会社テックピット CEO

学生時代にインドのデリーにある世界2位のA/Bテストツールベンダーでグロースハッカーとして働いた後、HR系スタートアップの立ち上げに従事し、新卒でGaiaxに入社。複数の新規事業の検証を行う。入社3ヶ月後に、自身のプログラミングの学習に遠回りした経験から、多様な学び方を提供したいと想いテックピットを創業。

西川 ジョニー 雄介 (にしかわ・じょにー・ゆうすけ)

スローガン株式会社 FastGrow事業部 部門長 兼 編集長

西川 ジョニー 雄介

にしかわ・じょにー・ゆうすけ

スローガン株式会社 FastGrow事業部 部門長 兼 編集長

モバイルファクトリーに新卒入社。2012年12月、社員数3名のアッションに入社。A/BテストツールVWOを活用したWebコンサル事業を立ち上げ、同ツール開発インド企業との国内独占提携を実現。15年7月よりスローガンに参画後は、学生向けセミナー講師、外資コンサル特化の就活メディアFactLogicの立ち上げを行う。17年2月よりFastGrowを構想し、現在は事業責任者兼編集長を務める。その事業の一環として、テクノロジー領域で活躍中の起業家・経営層と、若手経営人材をつなぐコミュニティマネジャーとしても活動中

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インドでのインターンが起業の原体験になった

大学入学後、すぐに起業を志し、複数企業でのインターンやガイアックスへの入社を経た山田氏。大学2年生時にはジョニーとともに、Webマーケティング系の新規事業の立ち上げを行っていた背景もある。

株式会社テックピット 代表取締役 山田晃平氏

山田氏が提供するTechpitは、CtoC型のプログラミング学習プラットフォーム。スキルあるエンジニアなら誰でも教材を販売でき、それらを購入してエンジニアから技術を学べるサービスだ。

テックピットでは「エンジニアがエンジニアを育てるエコシステム」をつくろうと目論む。その原点には、インターン時代に働いていたベンチャーで、インドへ出向した経験がある。

山田インドのプログラミング教育は熱量が高く、驚きました。地域にもよりますが、インドにおける三大エリート職種が「医者」「政治家」「エンジニア」で、誰もがエンジニアを目指していました。

住まわせてもらっていた家の小学6年生の男の子も、当たり前のようにJavaの教科書を読み込んでいて、すごい光景だなと。

一方、日本のプログラミング教育を見てみると、サービスやスクールが立ち上がってはいるものの、「このままではスピードが全然遅い」と思いました。世の中にいるエンジニアみんなが新しいエンジニアを育てるシステムをつくれば、社会を変えられると考えたんです。

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「起業が当たり前」の環境に身を置くのが大切

もともと山田氏には、「テクノロジーの最先端といわれる地域で働きたい」想いがあった。インターン先がインド企業と提携していたこともあり、社長に直談判して出向したのだという。しかし、実はインドへ行くまで、プログラミングは基礎をかじったくらいで、経験もほとんどなかったそうだ。

山田着任1週間で「You are useless.(君は役立たずだね)」と言われてしまって、「このままじゃ帰れない」と死に物狂いで学びました。隣席のエンジニアに渡されたタスクをひたすらこなしていきましたね。

FastGrow事業部 部門長 兼 編集長 西川ジョニー雄介

ジョニー日本では、僕と一緒に営業やWebマーケティングに関する営業やコンサルティングをやっていましたよね。どういった経緯で、プログラミングへの強い熱意が生まれたのでしょうか。インドでエンジニアのレベルの高さを体感して、これから重要になっていくと感じた?

山田単純に、普段の生活でさまざまなものが移り変わっていく様子を見る中で生まれた熱意ですね。僕は1994年生まれで、世代的にガラケーも使っていたんですが、周りの人たちが一瞬でスマホを使うようになっていった変化がすごく印象に残っているんです。

「社会を変えるのはテクノロジーであり、それらを操るエンジニアだ」と強く実感しましたし、自分自身もプログラミングを学ぶべきだろうなと。

ジョニーなるほど。それにしても、山田さんは年齢的には若いですが、恐怖はないんでしょうか?

学生時代も僕が「インターンに集中するために休学したら?」と勧めたら、休学にかかる費用を調べてすぐに親の反対を押し切ってでも意思決定してしまうし、無給でもインドへ行ってしまいますし、果てには起業までしてしまって。

山田起業や資金調達に対して、多少の恐怖はありますよ。けれど、新卒入社したガイアックスでは、新卒社員の6割が「起業のため」に退職するような環境なんです。

「起業なんて普通のことだし、大きなことを達成するためには外部からお金を集める必要もある」という価値観に、大きな影響を受けました。

そのうち、恐怖はだんだんと薄らいでいったんです。起業家を志すなら、周りの人が何を目指していて、どういった発言をしているのかは、その後の人生を左右する大きな要因になると思います。

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学生起業家は弱みをさらけ出し、外部の力を借りればいい

豊富なインターン経験があったとはいえ、「ほぼ学生」で起業した山田氏は、分からないことだらけだったという。当時を振り返り、その状態だったからこそのメリット・デメリットについて言及する。

山田メリットとして大きいのは二つ。まず、よく言われる話ですが、若くて体力がある時期なので、長時間働くことができます。もう一つは、学生は社会人に比べてバーンレート(会社の経営を維持するために最低限1ヶ月にかかる資金)が低く、少ない生活費で生きていきやすい。総じて起業に向いている時期だと思います。

一方で、社会人経験がないことは大きなデメリットでしたね。けれど、外部の人の力を借りればなんとかなります。弊社では投資を受けているエンジェル投資家の方々にも教えを請いながら、事業を前進させていきました。

山田大きな会社との提携を進めるときなど、僕も分からないことだらけでしたが、「どうやればいいんですか?」と素直に聞いています。提携の商談を進めるときも、ミーティングが終わった後にすぐFacebookで友人申請をして、「こういうアクションをした方が良い」と伝えられた通りに仕事をしたりしていました。

ジョニー最近、起業家の方に学生起業の是非について聞くと、「とにかくやってしまえばいい」と話す人もいれば、「社会人経験を積んでからのほうがいい」と話す人もいます。山田さんは「やってしまった側」の人ですが、学生起業を勧められますか?

山田起業家は2タイプいると思っていて、人によりけりだと考えています。「ある業界課題をどうしても解決したい」というタイプと、「事業づくりが好きだから何でもやりたい」というタイプです。

前者の場合は「これを10年から20年かけて解決したい」という課題を見つけるまでは踏み出さないはず。そういう人は、そもそも世の中に何を提供したいのかを考えながら、人生を歩んでいくべきだと思います。

一方、後者の場合は、入社した環境に染まってしまいやすい。起業の1回目は失敗するかもしれませんが、すぐに事業をつくって、何個も立ち上げ続ければいいと思います。

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学生は起業家のコミュニティに参加し、自らの得意領域を見つけるべし

ジョニー最後に「若いうちにやっておくべき」というアドバイスがあれば、教えてください。

山田二つあります。まず、成功している起業家が多いコミュニティに入ること。思い返すと、僕はガイアックスのコミュニティに入れたことが本当に大きかった。いきなりの起業に戸惑いがあるなら、アントレプレナーシップの強い人たちが働いている会社やVCでインターンを勧めます。

もう一つが、ポジショントークも入りますが、テクノロジー領域での起業を志すなら、やはりプログラミングを勉強すること。最初につくる事業は、資金がショートする前にどれだけ早くピボットできるかが重要だと思っています。

その観点では、自分でコードを書ける人と書けない人で、対策するときのスピード感が大きく変わってきます。

ジョニー山田さんの意見を受けて、僕も伝えたいことがあります。FastGrowは起業家や新規事業担当者の方たちを、だいたい700回ほど取材しています。イベントも150回ぐらい開催しました。彼らのお話を聞いたとき、大切にされているポイントは人によって違います。

山田さんは「テクノロジー」をキーワードにされていますが、テクノロジーに苦手意識があっても、自分の得意を活かしたその人なりの事業モデルが必ずあるはずです。

たとえば、僕の場合は目の前の挑戦者を応援すること、つまりセールスとコンサルティングが好きなので、その長所が活きるモデルの新規事業を前職で立ち上げていたし、FastGrowのモデルも現時点では同じです。「ここは人には負けない」という強みを見つけ、それを武器に事業やビジネスモデルをつくっていくとよいでしょう。

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立ち上げフェーズでは、「ニーズ検証」が最重要

パネルトークが終わると、学生たちから質問が挙がった。

事業構想からサービスへ落とし込むまでで、最も大変なことは?

山田ユーザーのニーズ検証に結構な時間を要しました。今のサービスで起業する以前、三つぐらいの新規事業の立ち上げに関わり、自分で検証したんです。「どの課題を解決すると最もインパクトが大きくなるのか」の見極めには頭を悩ませました。

基本的に、検証は小さく始めるべき。一つの事業に対して10人から20人くらいにインタビューし、検証後にサービスを立ち上げるフローで進めていました。その点、Techpit は、Twitterを活用した検証がとても上手くいきましたね。

30人ほどのユーザーにインタビューすると同時に、Twitterで「こういうサービスがあったら使いますか?」と投稿していると、たまたま1,000リツイートぐらい伸びたものがあったんです。

そこで登録者を募集したら、1日で1,000ユーザー増えた。ニーズの強さを確信できたので、そのまま突き進みました。

多くの事業をつくってきた山田さんが考える、事業づくりにおいて大切なことは何でしょうか?勘違いしやすいポイントなどがあれば、教えてください。

山田「本当にユーザーが求めているものなのか」や「本当にお金を払ってでも使いたいものなのか」をしっかり検証することですね。ただ、今のフェーズの僕だからこう言っているだけで、IPOを経験されている起業家の方は、まったく違う回答をされるかもしれません。

ジョニー僕の意見を付け加えると、事業立ち上げにおいては「競合の有無」を見るのが重要だと思います。「競合がいる領域」は、ちゃんとマーケットがあることを示しています。つまり、競合がいたとしても、「どうすればもっとパイを大きくできるか」を考え抜けばいい。

逆に、競合がいなければ、マーケットがないに等しいんです。僕もそのような事業を手がけたことがありますが、想定していたマーケットが存在せず、失敗に終わりました。「マーケットをゼロからつくろう」という発想は悪くないのですが、その場合は“代替財”が何なのかを考える必要があります。

代替財とは、つくりたい事業で満たそうとしている人びとの欲求を、現時点で満たしているものです。「マーケット」という抽象的な枠組に捉われず、「自分がどのような価値を社会に提供しようとしているのか」という視点で物事を捉えられますよ。

「起業するなら今」といったバブルを感じますが、本当に今やるべきなのでしょうか?

山田シリーズAの調達は厳しい、シードはバブルという話はよく聞きます。個人的にはお金を集められるときに集めておいたほうがいいとは思いますね。

一方、外部環境がどうあれ事業が伸びてさえいれば、外部資本は得られるはず。調達のしやすさについては予測しづらい部分もあるので、やる前に意識する必要はないと思います。

外部環境については、「資金調達のしやすさ」よりも「マーケットの成長速度」に目を向けるべきでしょう。僕たちの場合、プログラミング学習市場がすごく盛り上がっている背景があります。

日本でも2020年にはプログラミングが小学校で必修化されますし、翌年には中学校で、さらに翌年には高校でも必修化される予定といわれているんです。

起業家を目指す者はみな、山田氏のようにリスクを顧みない挑戦を求められるだろう。しかし、それには恐怖がつきまとう。「起業とは崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなものだ」とは、LinkedIn創業者であるリード・ホフマンの言葉だ。

恐怖を振り払うには、山田氏のように「起業が当たり前」という価値観が浸透した環境に身を置くのが大切なはず。サービスのローンチまで漕ぎ着けられた背景には、「ガイアックスのコミュニティに参加できたのが大きかった」と山田氏も強調していた。

優秀な起業家やキャピタリストと接点を持ち、彼らの思考や価値観に触れることで、成功への最短距離を歩めるだろう。FastGrowが運営するxGarageも、第2期エントリーの募集に向けて動き始めている。起業を志す学生は、ぜひチェックしておいてほしい。

登壇者

山田 晃平 (やまだ・こうへい)

株式会社テックピット CEO

山田 晃平

やまだ・こうへい

株式会社テックピット CEO

学生時代にインドのデリーにある世界2位のA/Bテストツールベンダーでグロースハッカーとして働いた後、HR系スタートアップの立ち上げに従事し、新卒でGaiaxに入社。複数の新規事業の検証を行う。入社3ヶ月後に、自身のプログラミングの学習に遠回りした経験から、多様な学び方を提供したいと想いテックピットを創業。

西川 ジョニー 雄介 (にしかわ・じょにー・ゆうすけ)

スローガン株式会社 FastGrow事業部 部門長 兼 編集長

西川 ジョニー 雄介

にしかわ・じょにー・ゆうすけ

スローガン株式会社 FastGrow事業部 部門長 兼 編集長

モバイルファクトリーに新卒入社。2012年12月、社員数3名のアッションに入社。A/BテストツールVWOを活用したWebコンサル事業を立ち上げ、同ツール開発インド企業との国内独占提携を実現。15年7月よりスローガンに参画後は、学生向けセミナー講師、外資コンサル特化の就活メディアFactLogicの立ち上げを行う。17年2月よりFastGrowを構想し、現在は事業責任者兼編集長を務める。その事業の一環として、テクノロジー領域で活躍中の起業家・経営層と、若手経営人材をつなぐコミュニティマネジャーとしても活動中

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執筆

岡島 たくみ

株式会社モメンタム・ホース所属のライター・編集者。1995年生まれ、福井県出身。神戸大学経済学部経済学科→新卒で現職。スタートアップを中心としたビジネス・テクノロジー全般に関心があります。

写真

藤田 慎一郎

デスクチェック

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

こちらの記事は2020年02月07日に公開しており、記載されている情報が異なる場合がございます。