クライアントに寄り添う“創意工夫の鬼”マネジャー渡辺が語る、「単価の振れ幅が大きいセールス」とFastGrowの秘密

登壇者
渡辺 浩史

2011年大手損害保険会社に入社。リテール/ホールセールスに従事し、営業社員数千人の中で年間成績優秀者が選出される社長賞を受賞。組織規模、業界の異なる領域でのチャレンジを志し、2015年7月に約50名規模であったスローガンに参画、新卒向けサービス「Goodfind」のセールスに従事し、複数の企業様の採用支援を行う。
チームリーダー、部門長を経て、2019年3月に全社横断にて営業戦略の構築、営業支援をミッションとした事業推進室を立ち上げ、室長に就任。クロスセル戦略の構築やハンズオン支援を中心に、FastGrowにも携わり、2020年3月よりFastGrowの営業責任者に就任。セールス組織の立ち上げ、組織化を推進しながら、大手企業からベンチャー・スタートアップまで幅広い企業様へのご支援を行う。

西川 ジョニー 雄介

モバイルファクトリーに新卒入社。2012年12月、社員数3名のアッションに入社。A/BテストツールVWOを活用したWebコンサル事業を立ち上げ、同ツール開発インド企業との国内独占提携を実現。15年7月よりスローガンに参画後は、学生向けセミナー講師、外資コンサル特化の就活メディアFactLogicの立ち上げを行う。17年2月よりFastGrowを構想し、現在は事業責任者兼編集長を務める。その事業の一環として、テクノロジー領域で活躍中の起業家・経営層と、若手経営人材をつなぐコミュニティマネジャーとしても活動中。

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「ドラゴンボールの元気玉、知ってます?あれをビジネスでやっているのがFastGrowです。ちょっとふざけて言えば、ですが(笑)」

FastGrow事業部でセールスを担う「クライアントリレーション部門」でマネジャーを務める渡辺浩史に仕事について聞くと、こうおどけて見せた。しかしその心は熱い。「相対するのは、激しい事業成長や事業変革を進める経営者やCxO。そんなお客様たちの想像を超える理想を実現するためのソリューションを考え抜いて、提案する毎日です。こんなにやりがいのあるセールスはなかなかないのでは」とまくし立てた。

そんな渡辺が、編集長の西川ジョニー雄介と共に登壇したミートアップのレポートを、今回はお届けする。あの急成長スタートアップとの共創や、CxOとの生々しいやり取り、そしてFastGrowだからできる価値提供の秘密などが披露された。この記事を読んで、実名での紹介にも触れ、FastGrow事業をより深く知ってほしい。末尾には、時間の関係からイベントでは語られなかった“付録”も……?

  • TEXT BY RIKA FUJIWARA
  • PHOTO BY SHINICHIRO FUJITA
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「試行錯誤と工夫の男」渡辺が、今を最も面白いと感じる理由

冒頭で語られたのは、渡辺の知られざるキャリアだ。2011年に大手損害保険会社にセールスとして入社すると、1年目から大車輪の活躍を見せる。当時から「売り方の工夫」に余念がなかった渡辺は、保険のニーズを持つ相手を探して売るだけでなく、ニーズを能動的に発生させることで効率的に契約を得る方法を試行錯誤し、実践してきた。

そうした努力を重ねて成果を出し続け、4年目には年間売上トップの成績も残した。数千人の営業社員のトップに立ち、順風満帆なキャリアを歩んでいたようにも見えるが、彼の頭には「転職」の二文字がよぎる。

渡辺入社1年目から「売り上げで一番になる」というのを目標にしてきました。運もあり、達成はできましたが、この僕の売り上げは会社にどれくらいの影響を与えているんだろうと気になりだして、調べてみたところ、愕然としました。

当時の会社全体の売り上げは約8,000億円。僕の年間売上は数億円でしたから、全体の0.1%にも満たない。死ぬほど頑張った感触があったのに、たったの0.1%もありません。あってもなくても一緒じゃないですか。そうではなく、自分の頑張りが事業の成長にもっとダイレクトに反映される環境の職場で挑戦してみたいと思いました。

裁量権や売り上げへの影響力が大きくなるであろう、大手ではなくベンチャー企業を志望先の中心にして転職活動を始め、2015年7月にスローガン社へ転職。1万人規模の大企業から一転、社員数は50人ほどになった。

転職後、最初に携わったのは大学・大学院新卒の学生向け就職支援サービス『Goodfind』のセールスだ。既存業務のキャッチアップだけでは飽き足らず、自分にしかできない仕事を貪欲に求めたハングリーな渡辺。まだ顧客としては少なかった大学発ハードウェアスタートアップ企業の開拓を推し進めると決意してゼロから行動を開始。単なる営業だけでなく取材なども駆使し、既存事業と新たな顧客を次々とつなぐことに成功した。

この成果が認められセールスマネジャーに登用されると、6人ほどのチームに培ってきたノウハウを伝え、年間売上高を約6億円から約8億円に向上させた。さらに商材の刷新や組み合わせた売り方の工夫にも精を出し、大口顧客からの受注単価を数百万規模から数千万規模に引き上げたことも、社内で認められるようになる顕著な成果だ。

FastGrow事業には2019年の6月から携わり、現在は営業責任者として3人のメンバーと共にセールス組織を率いている。

FastGrow事業部 クライアントリレーションズ部門 部門長 渡辺浩史

損害保険、Goodfind、FastGrowとこれまで大きく分けて3つの事業において、セールスを経験してきた。その中で「今が一番自分に合っているような気がする」のだという。その理由は、既存の商材・プランを販売するだけでなく、クライアントに応じてカスタマイズする「マーケットインの意識」がこれまでで最も強く求められるからだ。

渡辺決められた商材を、ただそのまま売るのではありません。クライアントはシード、アーリーフェーズのスタートアップから大企業・大手企業に至るまでさまざまです。それぞれの事業成長を支援するよきパートナーとして、何ができるのか、何をすべきなのかといった視点を最も大切にしています。

ですから、部門の名称にも「セールス」や「営業」を入れていません。あくまで、クライアントとなる企業様との間でリレーションシップを構築し、互いが互いを好きになるようなコミュニケーションをとり、一緒に成長していくんです。だって僕らは、「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」というビジョンへ向かって仕事をしているわけですから。

また渡辺とジョニーは、クライアント企業の経営陣やCxOと直接相対して、コミュニケーションをとっていく場面が多いことも、FastGrowセールス業務の特徴の一つだと声をそろえる。

はじめから「売ること」を目的にせず、まずは信頼関係を醸成していく中で、生々しい経営課題を聞く。その後は情報や意見の交換を継続的に進めることで、悩みや将来への期待を共有する。そうして関係値を培った上で、長期的かつ本質的に課題解決のソリューションを提案し、伴走していくのだ。

クライアントとのコミュニケーションにおける話題は経営戦略から事業戦略、採用戦略、さらには日々のマネジメントの悩みなど、多岐にわたる。「百戦錬磨の起業家や経営陣との間で、関係値を維持していくだけでも簡単ではない」のだが、根気よくその対応を続けていくと「報われた」と胸が熱くなる瞬間が来るのだという。

渡辺スローガン社は採用支援をメインにしているため、特に意見や情報を求められることが多いのは、採用に関する話題です。でも、ある時ふと、クライアント企業の経営陣から「今後資金調達するんだけれど、どうやってPRバリューを最大化すればいいの?」など、採用領域に閉ざされない、事業戦略やPR戦略に関するアドバイスを求められることがあるんです。

その瞬間は、採用パートナーのうちの1社というだけでなく、企業を一緒に伸ばしていくパートナーの1社としても認めてもらえたのだと感じ、とても胸が熱くなりますね。

こうして苦労を乗り越えた先には、嬉しいことに「セールス」としての結果もついてくる。受注単価について「同じ商材を扱って、同じ企業に向き合っている場合でも、誰が担当するかで(受注)単価が20万円のこともあれば、数千万円にのぼることもある」と内実を打ち明けた。「販売」ありきではない、スタートアップやベンチャーとの信頼関係の構築を優先する“クライアントリレーション”部隊は、結果的にセールス職の人間なら誰もが喉から手が出るほど欲しい「高単価の受注」を手にするための仕掛けとして、機能し始めている。

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急成長コミット事例3選~無償の戦略策定から数億円調達への軌跡?

FastGrowの取り組みを象徴する、いくつかの企業事例がある。はっきり言って、名立たる急成長企業との事例である。渡辺とジョニー編集長が具体例を振り返った。

シード、アーリーフェーズのスタートアップではLeaner Technologiesが特徴的だ。コピー費や電気代、文房具の購入費などの「間接費」削減をサポートするクラウドサービス『Leaner』を展開している。渡辺がリレーションを構築し始めた2019年春ごろ、同社は事業の加速に人の採用が追いついていない状況だった。

渡辺代表の大平さん(代表取締役CEO 大平裕介氏 取材記事はこちら)は非常に優秀で、事業領域の選定も素晴らしく、絶対に伸びる会社だと確信を持ちました。しかし、創業期だった当時はとにかく事業成長に向けてすべきことが山積している一方で、メンバーは足らず猫の手も借りたい状態。全員がBizDevとしてせわしなく駆け回っていました。

これはどういうことかというと、僕らとしては採用の支援をぜひしたいと思っているものの、HRの専任担当者がいないこともあり、明確な採用戦略が存在していなかったということです。

そこで渡辺が作成したのは、なんと同社の中長期の採用戦略まで含めた全30ページに渡る提案書だ。単なる業者というだけでなく、同社のHR担当者になったつもりで思考と提案を行い続けることで、創業メンバーからの信頼を得ていった。

渡辺FastGrowとしては、間違いのない「未来のイノベーター」候補と見ていたので、採用といった面からどうしても成長を支援したかった。創業から間もない時期で予算を割けないということでしたが、そんなことは関係ありません。

戦略作りのお手伝いはちょっと特殊ですが(笑)、FastGrowだからこそできることとして、招待枠でイベントに出てもらい、レポート記事を作って拡散するなど、創業期の知名度を上げるお手伝いをしてきました。

そうしてLeaner Technologiesは、2020年6月にプレシリーズAの資金調達をしたタイミングで、FastGrowに2本の記事広告を発注した。先にも紹介した大平氏インタビュー記事と、大平氏、ラクスルの松本恭攝氏、キャディの加藤勇志郎氏との鼎談記事は、多くの読者獲得につながっただけでなく、同社のさらなる事業成長の一助となったと誇りを持って言える。

まだ受注までには至っていない例として、経営管理SaaSを提供するログラスの支援事例も紹介した。

ジョニーさまざまな支援の一環として、XTech Venturesと共催で「起業家輩出合宿(レポート記事はこちら)」というものもやっています。1泊2日で、事業計画を資金調達できるレベルにブラッシュアップさせることを狙ったものです。

2019年1月の第1回開催時に参加してくれたのが、同年にログラスを起業した布川さん(代表取締役CEO 布川友也)です。オーディエンス賞・審査員賞に加えて、僕らもFastGrow賞を贈らせていただきました。まだ起業前でしたが、「日本企業の経営企画を変えたい!」という強い想いと、その事業計画の緻密さには驚かされました。

ログラスは2019年5月に創業すると、翌年7月にシードラウンドで8,000万円の調達を発表した。このタイミングに合わせ、FastGrowでは取材記事を取材記事を無償で制作・公開したほか、主催しているピッチイベントへの登壇機会も提供した。

ジョニー僕らの持つアセットを活かして、できる支援をしているところです。今後の成長を心から期待しています。来年くらいには大きなプロジェクトをご一緒できたらいいなと想像しています。

冒頭で述べた「元気玉ビジネス」とは、まさにこうした支援を指した表現だ。短期的な売り上げにつながらなかったとしても、イノベーターの成長支援やイノベーションの創出につながりそうな動きはくまなくチェックし、FastGrowのアセットを活用して、小さくても関係値を築く。まさに先義後利ということだ。一つひとつは小さくても、集まることで結果として大きなプロジェクトに発展させていきたい。いわば、ラスボス・魔人ブウも倒すほど大きな威力を発揮する元気玉のように。

次に、ミドル期の好例として紹介したのは、衣服生産プロセスを支援するシタテルだ。FastGrowと出会った時は社員40名ほど、まさに採用強化のフェーズだった。当時の同社が抱えていたのは、望んでいるような人材とのマッチングがなかなかできないという悩みだった。

ジョニーシタテルは、アパレル業界ではもちろん、知名度が高かった。しかし、採用面で求めていたスタートアップやベンチャー志向の人たちからは「アパレル分野に興味はないから、自分が行くところではない」「BizDev募集、と言われても何をしているかがわからない」と思われ、敬遠されがちという課題がありました。

僕らが捉えたニーズは、「シタテルの価値を正しく伝え、ベンチャー界隈で存在感を発揮し、優秀な人材の採用につなげる」ということ。多くの予算は割けないとのことでしたが、国内で9兆円規模にもなる巨大な衣服産業の変革に挑む姿を見て、「これはぜひ応援したい、社会を変える動きだ!」と思いました。

FastGrow事業部 事業部長 編集長 西川ジョニー雄介

当初は記事数本だけ、というスモールスタート。それでも代表の河野秀和氏やCTOの和泉信生氏、取締役の鶴征二氏といった経営層のインタビュー記事はよく読まれた。

好感触を得た同社は、FastGrowの活用に力を注ぐと決めた。現在ではイベント参加など、より多くの取り組みで協働しており、FastGrowとしても支援の幅を広げている。

ジョニー僕たち自身、スタートアップやベンチャーのお財布事情はわかっているつもりですから、特にお取り引き初期においては、受注価格が上がるようにという値段交渉はあまりしていません。でも、継続的なお付き合いになると「次はもっと高値で見積もりしてくれていいよ」と言ってくれるケースが出てきました。そうして自然と販売単価が上がることはありますね。

イベントや記事の取材などで経営層と接する機会が多いため、人事やPRのご担当者だけでなく、経営陣まで含めた会社全体として、FastGrowのサービスとしての魅力を感じやすいのが大きいのだと思います。経営層を巻き込みながら、セールスとしての価値を発揮できるのは非常に面白いですね。

こうした背景から、クライアントリレーションの質によって、顧客に提供できるソリューションは1にも10にも100にも変化する。例えば、記事1本で定性的な認知変化を狙うのか、「2名を採用する」という目的に向けて記事とイベント開催などを組み合わせるのか、FastGrowユーザーに直接働きかけて行動を促すキャンペーンを打つのかなど、さまざまなソリューションを提供してきた実績がある。だから、顧客単価も、セールスが捉えるクライアントの課題や、その課題を解決すべく提案するソリューションに応じて、大きく変化する。

いわば、“クライアントへの提案”という段階でセールス職が起こせる変化が大きいということだ。腕の見せどころがたくさん存在する。「無形商材を自分で工夫して売っていきたい」そんな想いを強く持つ人間なら、強いやりがいを感じるはずだ。

クライアントからのメッセージも紹介した。以下に貼り付けたのは、DROBE代表の山敷守氏に対し、ピッチイベントへの無料登壇を提案した際にいただいた返事。このように、将来に向けた協力姿勢を示してくれるクライアントも増えてきている。

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FastGrowでしか「あのJTの“正しい今”」は伝えられない

続いて紹介したクライアントは、なんとあのJT(日本たばこ産業)。この企業を知らない日本人はいないはず、と言えるほどの大企業だ。FastGrowはベンチャー・スタートアップ企業に特化したメディアだと思っている方も多いかもしれないが、実はそうではない、ということも、今回改めてお伝えしたい。

JTでの、FastGrowが取り組むべき課題は簡単なものではなかった。それは「正しくない認知の是正」だ。例を挙げれば、「近年はたばこへの風当たりが厳しく、マーケットは縮小傾向にある」「大きな組織のため、裁量が小さそう」といったイメージ、「そうじゃないの?」とあなたも思うのではないだろうか。しかもFastGrowユーザーは20~30代が中心だ、こうしたイメージをより濃く抱いているはず。

しかし逆に言えば、それはFastGrowにとって、やりがいにつながる。読者の認知を変えられた暁には、FastGrow自体の提供価値が非常に大きなものになる。渡辺も自然とそういう考えに至り、簡単ではない提案に力を注いだ。

渡辺リレーション構築の中でわかったことがあります。実は今、JTは非常にチャレンジングなフェーズなんです。

日本は、世界でも類を見ないスピードで加熱式たばこの普及が進んでいます。しかし、広がっているのはアメリカ発のIQOS(アイコス)。

この状況を逆転するため、開発体制を変えたり、新しい人材を採用して外部の発想を積極的に取り入れたりと、変革を進めています。

もちろん渡辺も、リレーション構築前からこうした真実を知っていたわけではない。しかし知ってしまうと「FastGrowだからこそ支援できることはないか」と考える。行き着いたのは、「一般の方の認知を変えるより前に、FastGrowユーザーに対してJTの変革の最前線を伝えることで、JTに対する全く新しい認知をじわじわと広げられるのではないか」という提案だった。

渡辺「正しい認知」が伝わっていないというだけで、就職先や転職先としての選択肢から外してしまう人は少なくありません。僕らはJTの「知られざるいま」を伝えるべく、年間で6本の記事を連載する予定です。

ここまででわかるように、FastGrowのセールスに企業の規模や予算は関係ない。「イノベーションを志向する」企業の成長を最優先に考え、進めている。

渡辺これから成長するであろう、さまざまな企業の皆さんと長期的なパートナーシップを築けることも、FastGrowで仕事をする醍醐味ですね。

それを特に実感した出来事があります。2020年7月1日に、FastGrow編集部がイノベーティブな企業を厳選し、若手経営人材とのマッチングを図る新サービス『FastGrow Selection』をローンチした際のことです。

採用プロジェクトを一緒に進めさせていただいているイングリウッドの上河原さん(取締役兼CHRO 上河原圭二氏)から「FastGrowの新サービスの成功に微力ながら貢献すべく、当社も必死で頑張ります」と言っていただけたんです。これ、普通に考えたらおかしいですよね?(笑)

僕たちは協力をお願いしている側なのに「貢献すべく頑張る」と企業様の方から言っていただけるなんて。本当に驚きましたし、嬉しかった。思い返すたび、期待に応え続けていかなければならないと、身が引き締まります。

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人の成功を“自分ごと”にできる人を求む

FastGrowのセールス職に求められる素養は、大きく2つに分けられる。高い企業理解力と、課題解決能力だ。

高い企業理解力とは、クライアント企業の経営状況や事業と組織の状況、メンバー個々人の雰囲気などを網羅的につかめるか、ということ。課題解決能力とは、企業を理解した上で課題を設定し、いかにしてそれを解決するかを提案する力。これらを兼ね備えることができれば、FastGrowというプロダクトをむしろ能動的に活用し、工夫を重ねたセールスで大きなやりがいを覚えることにつながるだろう。

この前提の上で、FastGrowのセールス職を経験することには、ビジネスパーソンとして2つのメリットがあると渡辺は言う。

渡辺1つ目は、ダイナミックな経験が積めるということ。ベンチャーやスタートアップと接する機会が多いため、カウンターパートが経営者や創業者本人になることが多いです。

彼らから企業背景や経営戦略、事業戦略をじっくりと聴きながら、成長のための戦略を一緒に練るようなことだってできます。知見・知識が貯まっていきますし、こんなに面白い企業があったのか、こんなに面白い起業家がいたのかと、日々の出会いにワクワクを感じることができますよ。

2つ目は、オールマイティに挑戦できる可能性があること。FastGrowはまだ4年目で、プロダクト開発面もビジネス面も、良くも悪くも未完成なサービスです。クライアントリレーション部門のフルタイムメンバーは、僕を入れて正社員3人だけですよ。だから、セールス系の職種を見ても、いわゆるマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスというような分業はまだ確立されていません。全てのファネルに携わるチャンスがあります。

だからこそ、自分のアイデア次第でサービスや売り方を磨ける。全員が当事者意識を高く持った“スモールチーム”の様相を呈しています。それに、みんなめっちゃ仲良しですよ(笑)。ミスが出ても、どのように次の改善につなげるかを一緒になって考えたり、体調や業務負荷もオープンに共有できるよう、意識してコミュニケーションをとるようにしています。

先にも紹介した『FastGrow Selection』、実はセールスが発案して誕生した新機能であった。「FastGrowの記事を読んだ人が、そのまま採用にエントリーできるサービスが欲しい」という企業の声を形にした。このように、職種を超えた速やかな共創の動きがあるのも、社内スタートアップならではだろう。

イベントの終わりに、FastGrowのセールスに必須の要素を聞いた。

渡辺「他人の成功を自分ごととして感じ、めっちゃ喜べるような人」がいいと思います。

「イノベーターの成長を支援し、未来社会を共創する」というビジョンを達成するためには、目先の売り上げにとらわれず、企業の成長のために何ができるかを考える力が求められます。人の成長や成功にモチベーションを感じ、自分のことのように喜べる人は、きっと心を尽くして仕事ができるはず。僕らが目指す「エンゲージメント型セールス」にフィットしますよ。

FastGrowのバリューの一つに、「Co-Creation(共創を心に)」があります。この言葉が僕たちのあるべき姿を体現しています。企業、読者や会員、仲間との共創の心を大切にする人とともに、FastGrowを前進させていきたいです。

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付録:語れなかったFastGrowの裏側~どんな企業とも会えますよ?

イベント後に「言い足りなかったことはありますか?」と聞くと「めちゃくちゃいっぱいある」と即答した渡辺。準備不足だったのでは?と切り返したくなったがその言葉は飲み込んで、ここからは「イベントレポートの“付録”」として、イベント当日には伝えきれなかったFastGrowの裏側を紹介しようと思う。

FastGrow事業部の人数をご存じだろうか。業務委託も含めると、フルタイムで働くのは13人だ。スローガン社が展開する事業の一つではあるが、独立採算のため、「社内スタートアップ」と呼ばれることもある。渡辺自身も、この環境を非常に気に入っているという。

渡辺僕ら自身も、一部のクライアント企業さんと同じように、創業期のスタートアップフェーズみたいな状況です。僕が感じるメリットとして、「いい意味でプロダクトに手を加えられる」という点を紹介したいですね。

クライアント企業の方々と最も多くコミュニケーションをとっているのは、間違いなく僕らクライアントリレーション部門です。スローガン社はHR系事業を中心に展開している企業だけれども、僕らはHRだけに閉じず、コーポレートブランディングやマーケティングといった他の領域まで網羅的にニーズをすくっていくことで、FastGrowというプロダクトの進化に大きく寄与できています。

以前は採用を目的とした記事広告の発注ばかりでしたが、最近は「完全に営業リード獲得目的で」という発注も見られるようになっているんですよ。経営戦略といった上流工程に基づいたニーズに応えるのなら、メディア・コミュニティとしてのFastGrowを活用しない案件だって出てきます。会員向けのメールマガジンでは、競合にも思えるWantedlyの採用ページ紹介だって、僕らが応えるべきニーズとしてそれが存在するのなら、やっています。

こうしたニーズをきちんとつかむためにも、自分自身を「型にはめないこと」が重要です。ニーズというのは、聞けば聞くほど出てきます。提供できるソリューションも、考え抜けば必ず出てきます。できる・できないは、また別の観点で考えればいいんです。「やろうとする」「やり抜く」そういう姿勢が大切ですよね。

さらに「全然話せなかった」と振り返るのが、今後の展望だ。人数の少なさにメリットは感じつつ、事業をスケールさせていくために見据える組織化について、改めて次のように語った。

渡辺組織規模が小さくて未成熟だからといって、セールスの現場で言い訳にできることは何一つありません。僕らは大きなミッションを掲げているため、クライアント企業さんからは非常に高いクオリティのアウトプットが求められます。そりゃ、相手は急成長スタートアップや急変革を遂げている大企業なのだから、当たり前のことです。むしろ、これは喜ぶべきこと。

これらの難しい業務を、今どのようにくぐり抜けているのかというと、「みんなで力を合わせつつ、個人のパワーを出し切る」という感じです(笑)。つまり、これから「再現性」と「組織化」を進めていくことが、僕らの大きな課題です。FastGrowはまだまだ創業期であり、黎明期です。一緒に基礎を創るメンバーをまさに募集しているところです。このフェーズを乗り越える経験は、非常に稀有なものになるし、市場価値の向上にも間違いなく寄与しますよ。

最後に、渡辺が以前、仕事中に不意に口にした言葉を紹介したい。「メディアとして3年も続けてきたから、載せてもらえるなら載りたいと思ってもらえるようになってきた。だから、今こっちから声をかけて、話を聞いてもらえない企業さんってほとんどいないんですよ」。この真意を改めて聞いた。

渡辺僕らはメディアを起点にしたコミュニティ、プラットフォームを有していて、3年以上の蓄積があります。「続けてきたこと」がそのまま大きな価値を生んでいるんです。価値が目の前にあるのだから、最大限に活用しようぜ、というだけの話ですよ。偉そうに聞こえるかもしれませんが、シンプルにそういうことです。

うまく活用すれば、世の中の全てての企業と接点を作ることができる。僕はそう思っています。そんなビジネス、あります?そうそうないですよね。

だから僕は、セールスを突き詰めたい人に対しては、心の底から「うち、いいよ」とオススメします、本当に。

こちらの記事は2020年09月10日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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執筆

藤原 梨香

ライター・編集者。FM長野、テレビユー福島のアナウンサー兼報道記者として500以上の現場を取材。その後、スタートアップ企業へ転職し、100社以上の情報発信やPR活動に尽力する。2019年10月に独立。ビジネスや経済・産業分野に特化したビジネスタレントとしても活動をしている。

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藤田 慎一郎

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長谷川 賢人

1986年生まれ、東京都武蔵野市出身。日本大学芸術学部文芸学科卒。 「ライフハッカー[日本版]」副編集長、「北欧、暮らしの道具店」を経て、2016年よりフリーランスに転向。 ライター/エディターとして、執筆、編集、企画、メディア運営、モデレーター、音声配信など活動中。

校正/校閲者。PC雑誌ライター、新聞記者を経てフリーランスの校正者に。これまでに、ビジネス書からアーティスト本まで硬軟織り交ぜた書籍、雑誌、Webメディアなどノンフィクションを中心に活動。文芸校閲に興味あり。名古屋在住。

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