連載あの執念の正体

「日本のインフラ崩壊を食い止める、“国家的な防波堤”を築く」──未経験から建設×3Dプリンタで国内シェア94%を突破する。Polyuse代表・岩本氏の熱狂

岩本  卓也
  • 株式会社Polyuse 代表取締役/共同創業者 

1993年生まれ、大阪府出身。信州大学理学部卒、一橋大学大学院商学部卒、東京工業大学グローバルリーダー教育院修了。一橋大学大学院在学中に人材マッチングアプリのスタートアップを共同経営。その後ベイカレント・コンサルティングにて経営戦略・事業戦略・業務改善等の各種業務に従事。経営全般とコーポレート部門全体の統括を担当。

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「次世代のインフラ基盤を築く 」──。 国内のコンクリート施工という巨大市場において、職人不足という深刻な課題にテクノロジーで挑み、建設用3Dプリンタの国内シェア94%へと急成長を遂げているのが株式会社Polyuseだ。

共同代表の岩本氏は、建設も3Dプリンタも未経験でありながらこのディープテック領域に飛び込み、紙数枚の企画書で数千万円の資金を獲得した異端の起業家である。

大学時代は理学部で物質循環を学び、仮説検証と実験に没頭。その仮説検証の姿勢は趣味にも表れており、今も年間200本のワインを飲み比べては、条件を変えながら味の違いを検証している。その行動の源泉は、純粋で歯止めの効かない好奇心だ。さらには、全国の土木工事の現場まで自ら足を運んで一次情報を掴む泥臭さと、「プロフェッショナルであること」を極限まで求める合理性を併せ持つ。

誰もが尻込みする巨大なレガシー産業で、彼を突き動かし続ける「純粋な好奇心」と「異常なまでの実行力」の正体に迫る。

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紙数枚の企画書からの挑戦。
解き明かされていない問題への純粋な探求心

Polyuseは国内シェア94%という圧倒的な実績を出されています。建設業界のどのような課題に取り組んでいるのでしょうか。

岩本私たちは、建設用3Dプリンタ技術を通じて「人とテクノロジーが共存する施工」を実現し、建設業界の産業基盤そのものを作り替えることに挑戦しています。

道路やトンネル、橋といった当たり前に存在するインフラは、これまで職人たちが現場で木の枠を組み、コンクリートを流し込むことで作られてきました。しかし、現在はその担い手である職人が高齢化により半減し、近い将来、約3兆円規模の施工供給が不足する事態に直面しているんです。

工場での大量生産という手もありますが、現場での施工に比べて複雑な形状や柔軟な対応が難しい。そこで私たちは、現場での柔軟性と工場生産の効率性を兼ね備えた「第3の方法」として3Dプリンタによる施工を提案しています。誰もが当たり前に使っているインフラを未来へ繋ぐための、新しいモノづくりを実装しているわけです。

【3Dプリンター住宅】建設業界の人手不足・インフラ老朽化を解決する建設用3Dプリンターで作りました(楽待 RAKUMACHI)

全くの未経験から、なぜこれほど巨大で困難な市場に飛び込もうと思ったのでしょうか。

岩本私の行動の源泉は、シンプルに「面白いかどうか」なんです。解き明かされていない問題があり、誰もやっていない分野の構造的な課題を解くことが純粋に面白いと感じます。

私は昔から、何かを知り尽くしたいという探求心が強くて、新しいことを知り、何かを変えたらどうなるのかという実証実験のプロセスに強く惹きつけられるんです。

とはいえ、ディープテック領域に知識ゼロで飛び込むことへの恐怖や迷いはなかったのですか。

岩本まったくありませんでした。「未経験からでは難しい」という声もありましたが、事業に必要な知識や技術は現場で学び、死に物狂いでインプットと実践を重ねれば必ずキャッチアップできると、本気で信じていたからです。業界の常識に縛られていなかったからこそ、リスクを恐れずに飛び込めました。

実績も技術もない、紙数枚の企画書の状態から、どうやって数千万円もの資金を調達したのでしょうか。

岩本優秀なエンジニアである仲間の技術力を徹底的に売り込んだことに加え、私自身の中に「絶対に巨大な事業を創る」という強い欲求があったからだと思います。

実は大学院時代に一度、ナンバー2としてスタートアップの創業を経験しているのですが、当時は同世代の起業家が手掛けるサービスが爆発的に成長していくのを横目で見て、悔しさを味わいました。

「次に挑戦するなら、彼らに負けないくらい巨大なマーケットで、大きなインパクトを残す事業を創りたい」──。その強い思いと覚悟があったからこそ、土木という数兆円規模の市場に対し、未経験であっても「必ずこの現場の課題を解き明かす」という強い情熱を持って提案できました。

私たちの目指す世界観と真摯な姿勢に共感し、共にリスクを背負って数千万円の開発資金をご出資いただいたゼネコン企業には、心から感謝しています。今は出資者のみならず、弊社の一番のユーザーでもあります。

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山奥の現場にも自ら足を運ぶ。
顧客との共創関係が生み出す熱量

ソフトウェアだけでなく、ハードウェアを扱い、現場に深く入り込むのは非常に泥臭いアプローチですね。

岩本実際に現場へ足を運ぶことでしか得られない一次情報があるからです。

時には車で入りにくい山奥の施工現場まで自ら足を運び、その現場ならではの制約条件や、現場の方々がどのように工事を進めているのかを直接確認します。現場に行き、実際に見聞きしなければ、本当の課題は分からないんです。

そのような泥臭い現場主義は、顧客との関係性にどのような影響を与えていますか。

岩本お客様とは単なる発注者と受注者ではなく、「共に業界を変えるチーム」という感覚で接しています。

一緒に現場に入り、深くコミュニケーションを取る中で、お客様の熱量に触れることができるんです。全国から多くの方々が私たちのイベントに参加してくださるのを見ると、これほどまでに期待されているのだと実感し、それが私たちをさらに突き動かす原動力になっています。

お客様の熱量が、岩本さん自身の探求心をさらに加速させているのですね。

岩本はい。最初は自分が「面白い」と思って踏み込んだ世界でしたが、お客様と対話する中で「これは日本のインフラの崩壊を食い止める、国家的な防波堤を築く使命なのだ」と後天的に気づかされたんです。

10年後の業界が直面する危機感を聞き、我々が「インフラのためのインフラ」として期待されていることを認識しました。その重い期待に真っ向から応え抜く覚悟が、会社を早いスピードで前に進めるエンジンとなっています。

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『プラダを着た悪魔』を基準とする、妥協なきプロフェッショナリズム

岩本さんが仕事において、絶対に妥協できないポイントは何でしょうか。

岩本「遅いこと」と「考えないこと」です。完璧なものを2週間後に出すより、30点でもいいから翌日に出してほしい。知らないことがあるなら調べればいいし、現場に行けば答えがあるのに行かない理由が分かりません。プロフェッショナルとして仕事をし、対価をいただいている以上、自ら考え、最速で実行するのは当たり前のことだと考えています。

非常に高い基準を組織にも求めているのですね。

岩本映画『プラダを着た悪魔』の世界観が、私の仕事の絶対的な基準なんです。あの映画は年に4〜5回、これまでに何十回も観ていますが、観るたびに「相手の期待を超えるプロ意識とは何か」を突きつけられます。 お客様は新しい方法を取り入れるために、多大なエネルギーを割いてくださっているわけですから。

だからこそ、現場のリアルを見つめず思考を止めるような姿勢は絶対に見せられない。「プロとして、顧客と業界に100%向き合えているか」を自分にもチームにも常に問いかけています。

最後に、今後の事業において最も熱狂しているポイントを教えてください。

岩本将来、職人不足によって生じる施工供給不足の規模は3兆円にのぼり、我々が関わるであろう部分だけでも2兆円分ほどは見込めます。

そのうち約30%にあたる部分を我々のプロダクトで置き換えられる計算になるので、それだけでも6,000億円分です。それだけの価値を生み出していくという大きな責任に対し、どう応え切るかという挑戦です。

今はまだニーズにプロダクトがフィットし、年間数億円のプロジェクトが動いている段階に過ぎず、業界全体を変革する規模には全く至っていません。これからクライアントやチーム一丸となって総力戦で業界のあり方を変えていく。まだ見ぬ新しい問いに向き合うこのフェーズが、今最も面白いと感じているところです。

提供:株式会社Polyuse

FastGrowの見解

日本のインフラの崩壊を食い止める「国家的な防波堤」を、未経験から築いていく胆力。岩本氏の行動の根底にあるのは、純粋な好奇心と、同世代への強烈な反骨心、そしてプロフェッショナルとしての妥協なき基準の高さだ。

面白そうという動機から始まった挑戦は、今や顧客との共創関係を生み、業界全体を巻き込む変革へと昇華している。 しかし、彼らが提供する3Dプリンタというハードウェアを起点に、いかにして全国の施工データを蓄積し、強靭な収益基盤を構築しているのか。その深淵なる事業メカニズムについては、次なる展開を待たねばならない。

こちらの記事は2026年08月07日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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