連載あの執念の正体

ティッシュ補充から百億ファンド連携まで──数百兆円の巨大不動産市場を切り拓く異端の起業家・Unito近藤の狂信

近藤 佑太朗
  • 株式会社Unito 代表取締役 

1994年東京生まれ。幼少期の約3年間を東欧ルーマニアで過ごす。明治学院大学経営学部卒業。在学中の学生団体設立や当時観光学では最先端といわれたクロアチア留学を経験。国内外のスタートアップを経て、2017年に起業。2020年2月には「帰らない日は家賃が下がる」独自の料金システムを導入した「unito」を発表。現在、一般社団法人シェアリングエコノミー協会の理事等も務める。2026年5月、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)に入会。

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「月の半分も家にいないのに、家賃を全額払うのはおかしくないか?」──。

そんな疑問から生まれた、「家に帰らない日は家賃が下がる」独自の料金システム「リレント」。この固定費を変動費に変える仕組みを武器に、オンラインの即日入居可能なプラットフォーム運営と、オフラインの物件清掃・管理までを一気通貫で行う垂直統合型のビジネスを展開。巨大な不動産市場のど真ん中で急速な成長を遂げるのが株式会社Unitoだ。

23歳で起業し、東急や三井不動産といった巨大デベロッパー、さらには世界的ファンドを次々と巻き込む代表の近藤佑太朗氏。だが、彼の真の凄みはスマートな事業モデルではない。ルーマニアでの過酷な体験由来の「生存本能」と、自らを「圧倒的に運がいい」と信じ切る強烈な自己肯定感。そして「本来は臆病」と自認し、常に最悪を想定して「人の3倍の手数」で泥臭く実業をハックする異常な行動量だ。自らの初期設定をスピードで覆し、未経験の20代にいきなり百億円規模の修羅場を託す。なぜ彼は若手を極限の環境へと導くのか。規格外の起業家の熱量に直球で迫った。

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現場のリアルを追求。数百兆円の超巨大市場で泥臭いタッチポイントを握り続ける

デジタル完結でスケールできるモデルが注目を集める中、なぜ複雑なレガシー産業である「不動産」に飛び込んだのでしょうか。

近藤人は誰しも、生活の中で不動産に接しないと生きていけません。何百兆円という桁違いの超巨大市場でありながら、日本一の企業ですらシェアは2%程度。ウィナー・テイクス・オールがないからこそ、ダイナミックな挑戦が可能です。「留守の日に家賃が下がる」というニッチな切り口からでも、とてつもなく大きな企業を作れるポテンシャルがあるんです。

プラットフォームだけでなく、現場 of 清掃から備品の管理まで自社で抱え込むのは、非常に手間がかかるアプローチに思えます。

近藤プラットフォームを提供するだけでは、現場のリアルな感覚が得られません。私たちは集客から日用品の補充まで一気通貫でやり、チャットでの問い合わせにも数分以内で即時対応しています。

オペレーションコストは高く労力もかかりますが、分業化が進む業界の中で川上から川下まで全て自社で担う。この泥臭いユーザーとのタッチポイントを直接押さえていることこそが、当社の最大の強みなんです。

全方位を手掛けることで、既存のステークホルダーと競合するリスクはありませんか。

近藤逆に幅が広すぎるため「完全に競合する存在」がいません。マーケティングからゼネコンとの調整、家具の企画、清掃まで全てを手掛けますから、機能ごとの競合はいても実は共存が可能です。一部屋だけ運営したり、1棟丸ごと当社のブランドで任されたりと、全てのプロセスを握っているからこそ、柔軟に入り込める圧倒的な優位性が保てているのです。

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ルーマニアで刻まれた生存本能と、日本人であることへの異常なまでの幸運の確信

巨大資本のトップと渡り合ってきた、その度胸と熱量の源泉はどこにあるのでしょうか。

近藤原体験は、3歳から6歳まで過ごしたルーマニアでの生活です。日本人が私1人という環境で揉まれ、「流されたり迎合していては生きていけない」という強烈な生存本能を学びました。

帰国後、日本の「校長先生の話を立って聞く」「体育座りをする」といった横並びのルールに直面し驚愕しました。海外では絶対的なルールなどなく、自分をアピールしなければ生きられません。誰かに合わせるのではなく、自らがルールを作る側に回る姿勢はその経験から形成されました。だから1回断られたくらいで諦めず、常に別のアプローチを考え抜きます。

資金ショートの危機など、ハードシングスに直面しても心が折れないのはなぜですか。

近藤自分が「とてつもなく運がいい」と心底信じ切っているからです。理不尽で壮絶な出来事がある中で、安全な日本に生まれ、スピードが圧倒的に速い現代で、自身のキャリアの最も脂の乗った時期を挑戦に費やせる。それだけでとてつもない幸運です。だから目先の困難で思い悩むことなどありません。

また、事業における私の口癖は「ROI(費用対効果)」であり、求める基準はシビアです。偉人たちが50年で成し遂げたことを15年でやるべく、常に「人生3倍速」で生き、社員にも通常の3倍のアウトプットを求めています。

常に3倍速で大胆に仕掛ける裏に、恐れや迷いはないのでしょうか。

近藤実は本来非常に慎重で、根は「内向的」で臆病なんです。しかし、その「臆病さ」こそが経営における最強の武器です。常に最悪のリスクを想定し、ランウェイは絶対に2年確保し、スクランブルプランも緻密に練り上げています。

臆病だからこそローリスク・ミドルリターンの機会を見つけ出し、通常の3倍のスピードと手数で実行する。それが結果的に巨大なリターンへと化ける。手数を圧倒的に打つからこそ、複雑で泥臭い領域をハックできているのだと思います。

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初期設定の低さは行動量で覆す。
成長思考の若手に数十億のディールを託す

専門知識が必要な市場で、あえて未経験の若手BizDevに裁量を与えていますね。

近藤私自身が「初期設定(学歴など)が高くなくても勝てる」ことを証明してきた人間だからです。起業家層の平均から見れば私の学歴は決して高くありませんが、学びの質を変えれば何にでもなれるという「成長思考」を強く信じています。

社内では「Take Away Valueの逆(=学びを他者に還元すること)+Next Action」を徹底しています。自身の学びを他者に還元し、ネクストアクションを設定して結果が出るまで実行する。その際、アクションが上手くいくかどうかは、実はあまりどうでもいいんです。大切なのは、失敗を恐れず試して結果が出るまでやり切ること。これを他者の3倍のスピードで繰り返せば、最初は平凡でも圧倒的な成果を出せる人材へと成長できます。ITリテラシーの高い若い世代のポテンシャルは計り知れません。

実際に入社した若手は、どのような修羅場に立たされるのでしょうか。

近藤当社のBizDevは全員が「事業責任者」です。入社後半年で不動産の知識を叩き込まれた平均年齢29歳の若手が、巨大企業の意思決定者のもとへ単身で営業に行き、数十億円規模の不動産運用ディールを獲得してきます。

さらに自社で100億円規模の不動産ファンドも運用しており、海外の機関投資家を相手に英語で数十億円単位の運用資金を獲得してくることもあります。英語が堪能でなくても容赦なくアサインします。極限のプレッシャー下に置かれれば、人は必死で壁を乗り越えられます。

逆に、近藤さんが共に働く仲間や、起業家として最も重要だと思う資質は何ですか?

近藤圧倒的に「度胸」です。20代前半で起業した当時、周りには優秀な起業家が多数いましたが、私のビジネススキルは底辺だったと思います。しかし、10年経って生き残ったのは数人です。違いは純粋な能力値ではなく、PMFの兆しが見えた絶好のタイミングで、リスクを恐れず大胆な投資や行動へと踏み出せるかどうかでした。

事業範囲が広く、最初は戸惑ってしまう候補者も多いのではないですか。

近藤確かに複雑で理解に時間を要するかもしれません。しかし、そこを乗り越えれば計り知れないチャンスが溢れています。最終的に目指すのは、暮らしのあらゆる領域をアップデートする「ライフスタイルホールディングス」です。「ゴールドマン・サックスと対等に渡り合ってきます」と目を輝かせるような野心を持った人材に、このカオスな環境を楽しんでいただきたいですね。

FastGrowの見解

不動産というレガシー市場で「ティッシュの補充から百億ファンドの運用まで全部やる」といった無謀にも思える壮大なビジョンを語る起業家は、世の中に複数名いるかもしれない。しかし、近藤氏の真の凄みは、それを大風呂敷で終わらせず、「言った通りに本当に泥臭くやり切っている」ことにある。

VCすら理解に時間を要する壮大な事業を前に、20代に百億円のディールを平然と任せる。「初期設定が低くても勝てる」「若ければ若いほど優秀」という信念を、圧倒的な行動量で証明してきた男だ。彼らが「ライフスタイルホールディングス」として暮らしの全てをハックする未来は、そう遠くないのだろう。これからのUnitoが仕掛ける圧倒的な実証実験の行く末を注視せずにはいられない。

こちらの記事は2026年06月08日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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