連載FastGrow Conference 2021

DXでは「非効率を恐れるな!」
大企業こそ実現が難しい理由と乗り越え方を、伴走のプロ・マクロミルとPOLに聞く

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登壇者
後藤 新
  • 株式会社マクロミル 統合データ事業本部 執行役員 
加茂 倫明

高校時代から起業したいと考え、国内外のベンチャー数社で長期インターンを経験後、東京大学工学部在学中の2016年に株式会社POL設立。「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する.」をビジョンに、理系学生向けキャリアプラットフォーム「LabBase」等を開発/運営中。

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2020年、世間をもっとも賑わせたキーワードのひとつ「DX」。

様々な業務のデジタル化を背景に加速したこのトレンド。国も、2021年より業務のデジタル化を推進する「デジタル庁」の設置を決定するなど、その勢いはさらに加速している。

2021年1月に開催したFastGrow Conference 2021では、このトレンドを改めて紐解くべく、『DX=データ活用は、勘違い!経営に切り込む「DXの真髄」』と題し、DX推進に伴走する2社をお招きし、セッションを行った。

登壇したのはマクロミル統合データ事業本部執行役員の後藤新氏と、POL代表取締役CEOの加茂倫明氏だ。改めて、「DX」とは何なのか、そしてDXにはどのような未来が待ち受けているかを、2人のお話から探りたい。

  • TEXT BY HARUKA FUJIKAWA
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まだまだ多い、「DX」=データ活用の勘違い

はじめに、それぞれの登壇者は本セッションテーマに合わせ、DXという文脈で自社の事業を捉えて紹介してくれた。一人目は加茂氏だ。

加茂DXという観点で捉えると、我々は二つの事業を手がけています。一つはDX人材の採用支援。企業が自社でDXを進めていくために必要なエンジニアやデータサイエンティストなどの人材の採用を支援しています。

もう一つは企業と、研究者とをつなぐ『LabBase X』(※現在は提供を制限中)というナレッジプラットフォームによるオープンイノベーション支援。研究者の持つ最新の技術を使いながら、ビジネスを作ったり、既存事業をアップデートしたりして、比較的広い意味でDXを支援してきています。

その経験の中で、加茂氏はまだまだ「DX」について勘違いをしている人がいると諭す。

加茂DXをデジタルトランスフォーメーションではなく、デジタライゼーションと履き違えているケースが少なくありません。単純にITツールやクラウドサービスを使うこと、ないしはツールを通して業務を効率化すること──それをDXと捉えているケースです。

ここで加茂氏はAmazonを例に挙げ、DXとはビジネスモデルの再構築であると付け加えた。

加茂価値の取引がオンラインで行われるのは大前提で、その中で、どう既存のビジネスモデルから変革できるかを考えなければいけません。

例えばAmazonの場合、オフラインで販売されていた本をオンラインで売るようにしたわけですが、本質は別のところにあります。データがたまるとともに、ネットワーク効果が働く。すると、レコメンドなどをはじめとする新たな価値や体験を提供でき、それによってユーザーが喜び、さらに使う。するとデータやユーザーが増え、Amazonはより良いサービスを提供できる。このサイクルが回り続ける状態の構築こそが、変革であり、Amazonの真の強みと言えるのではないでしょうか。

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「DX」は効率化ではなく、中長期の変革

加茂氏に続きマイクを握ったのは、マクロミルの後藤氏。同社は、マーケティングリサーチの会社として知られるが、その過程では膨大なデータを取り扱うという意味で、実はDXと密接な関係を持つ。

後藤マクロミルはアンケートなどのイメージをお持ちいただいていると思いますが、それによってつまりは、とてつもない量の消費者のサーベイのデータを蓄積しています。年間5億の回答データが集まり、お客様からご相談いただく量は年間約3万件。我々はそれを武器にしつつ、新たな事業を作り続けてきました。

ただ、データの数は各社が争うレッドオーシャン。その厳しい競争環境の中で、マクロミルは集まるデータの数だけではなく、その徹底した管理や権利まわりにも力を注いでいる。

後藤近年、データに関する規制が強まる中、われわれの事業においてもデータ利用における同意や権利関係は重要な議題です。マクロミルではMyDataという業界団体やアメリカのiab.というテクノロジーの業界団体にも参画し、業界全体であるべき姿を議論しつつ、データとの向き合い方にも力を入れています。

業界全体の視野も持ちつつデータを活かし戦うマクロミル。その背景から、後藤氏も加茂氏と同様、あくまでデジタライゼーションに終始していることへ警鐘をならす。

後藤もちろん、デジタルツールの利用は必要です。ただ、それが全てではない。DXとは目先の“効率化”ではなく、中長期の目線で腹をくくって取り組む『変革』。加茂さんのお話にもあったように、新しい価値を生み出していく行為です。そのためには、時に泥臭いことや人間臭い部分、感情的な部分などとも向き合い、“効率化”とは逆の要素を大事にしなければいけないこともある。

例えば、遠隔の会議で、「この会議の意義は伝わった?」とか、「会議の中で何か分からなかったことはなかった?」といったコミュニケーションを入念にやった方がいい場合ってありますよね?効率化を目的におくと、そういった部分がそぎ落とされかねない。変革には“非効率”に見える行動も必要です、時にはその“非効率”も、勇気を持って選ばなければいけないんです。

重要なのは、「何のためのDXか?」を自問自答する姿勢だと、加茂氏も言葉を続けた。

加茂デジタル化自体は、目的ではないですからね。効率化ばかりに猛進してしまうと、本来の成果にたどり着けなくなるリスクもある。目的に立ち返らなければ、手段は選べませんから。

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大企業は「DX」導入に苦労する?鍵は経営者の覚悟

では、どのようにDXを進めるべきか。課題を列挙しつつも、加茂氏は経営陣の覚悟こそがなによりも重要だと語る。

加茂ビジネスモデルを変革するにはイノベーションのジレンマが不可避です。これまでのビジネスモデルを否定するような変革を起こさなければいけなくなる。それを乗り越えるには、経営陣のコミットが必須で、それができず立ち消えになったケースも少なくありません。

後藤氏も今までの加茂氏の言葉を受けて、だからこそ「苦労するのは大企業である」という。

後藤私の経験上、特に大企業は熱量が落ちやすい構造にあると感じています。トップからアプローチしていっても、本部長から部長、部長から課長、課長からメンバーと話を進めていく過程で、どんどん当初の熱が薄れていくんです。

反対にトップの意思がストレートに通る「トップダウンの会社」ではDXは比較的うまくいくと語る。

後藤例えば加茂さんの会社。スタートアップは基本的に、スモールで柔軟性があり、トップの意志が浸透しやすいですよね?トップの腹が据わっていて実行までやりきれる会社であれば、痛みが伴ってもやれるのではないかと思っています。

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2021年、「DX」は大きなチャンスに

セッションの最終盤、二人は「DX推進の伴走者が語るミライ」というテーマアジェンダに対し、それぞれの見解を語った。加茂氏は、今年は昨年よりもより広い意味でのDXによる変革が行われるということ。またそれらは二つの軸で進んでいくことを教えてくれた。

加茂一つは、いわゆるワークスタイルや業務プロセスのDXでしょう。オンライン会議や契約の電子化などがわかりやすい例で、これは当たり前になっていくと思います。

もう一つは、「Software is eating the world.」という言葉が表すような、様々な産業をITで変革していく動き。医療や研究など、これまで変化の難易度が高いとされてきた産業もアップデートする動きがより強まるのではないかと考えています。

対する後藤氏は、少し異なる視点で展望を述べる。注視するのは、DXの鍵でもあるデータとの向き合い方だ。

後藤ここ数年で注目されたGDPRはもちろん、来年には改正個人情報保護法も施行されるため、データ活用に関するレギュレーションとの向き合い方はより重要になっていくでしょう。我々も業界として取り組んでいる部分ではありますが、各社DXに取り組むにはより注視すべきものになっていくと考えています。

最後に加茂氏はイーロン・マスク氏の言葉について言及しこのセッションを飾った。

加茂イーロン・マスク氏は人類・イノベーションの発展を木に例えたときに、人類は枝葉のイノベーションに終始しすぎてると指摘しています。これをDXの領域で捉え、社会全体を見ると、まだまだやるべきことはたくさん残っているということにもなる。ビジネスの機会はまだまだあるはずです。

こちらの記事は2021年04月12日に公開しており、
記載されている情報が現在と異なる場合がございます。

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1998年生まれ、広島県出身。早稲田大学文化構想学部在学中。HRのスタートアップで働きながら、inquireに所属している。興味分野は甘いものと雑誌と旅行。

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