連載FastGrow Conference 2021

英語力や起業経験がなくても、まずアメリカで起業すべき理由
──ベイエリアで戦う日本人起業家が語る実情

登壇者
内藤 聡
  • Anyplace, Inc. Co-founder & CEO 

Anyplace共同創業者&CEO。大学在学中にサンフランシスコへ語学留学。大学を卒業した2014年、起業のためにシリコンバレーへと降り立つ。シリコンバレー・サンフランシスコで起業し、2017年に賃貸サービスのAnyplaceをローンチ。

近澤 良
  • オーティファイ株式会社 CEO 

ソフトウェアエンジニアとして日本、シンガポール、サンフランシスコにて10年以上ソフトウェア開発に従事。DeNAにてOSSゲームワークや、全米No.1となったソーシャルゲームの開発を行ったのち、シンガポールのVikiに入社し、プロダクトエンジニアとして製品開発をリード。その後サンフランシスコへ移住し、現地スタートアップに初期メンバーとして参画。2016年に退社しAutify, Incを米国にて創業。2019年1月米国トップアクセラレーターAlchemist Acceleratorを日本人として初めて卒業。

長谷川 浩之
  • Ramen Hero Inc. Founder / CEO 

1989年生まれ、山梨県出身。東京大学経済学部卒。2013年、フード系スタートアップに創業メンバーとして参画。その後渡米、2017年にサンフランシスコにてRamen Heroをローンチ。2018年、Postmatesなど輩出する米国シードアクセラレーター AngelPadに参加。Wall Street Journal, People Magazineなどのメディア、雑誌にて掲載。現在全米48州の顧客に対し商品を提供中。

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「世界を変えたい」──大志を抱いて起業したものの、なぜかその「世界」は日本国内であることが前提とされているケースも少なくない。

一方、初めから文字通り「世界」を目指し、海外で起業して成果を残している日本人もいる。

FastGrowは2021年1月、次なる偉大な事業家を生み出すため、道を開拓してきた現役事業家の経験に学ぶ「FastGrow Conference 2021」を開催。その中のセッション「起業家よ、この国を出よ──海外から見た、日本人の可能性」に登壇したのは、Anyplace Co-founder & CEOの内藤聡氏、Autify CEOの近澤良氏、Ramen Hero Founder / CEOの長谷川浩之氏だ。モデレーターはFastGrow編集長の西川 ジョニー 雄介が務めた。

アメリカのベイエリアで起業した3人。その道は険しいと思いきや、ベイエリアでの日本人起業家コミュニティの存在や、利用できるアクセラレーターの豊富さなど、「日本人起業家が成功するロードマップができつつある」という。「英語力の無さを言い訳にできない環境すら整いつつある」というから驚きだ。「海外起業」にまつわる固定観念に揺さぶりをかける、熱い議論の記録をお届けする。

  • TEXT BY AYUMI KANASASHI
  • EDIT BY MASAKI KOIKE
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日本を飛び出し、アメリカ・ベイエリアで起業した挑戦者たち

西川ジョニー雄介(以下、ジョニー)FastGrowの編集長を務めているジョニーと申します。「起業家よ、この国を出よ──海外から見た、日本人の可能性」は、海外での起業や海外トレンドをテーマにしたセッションです。

実際に海外で起業されているお三方に、リアルな話を聞かせていただこうと思っておりますので、よろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介をお願いできますか?

Autify株式会社 CEO 近澤良氏

近澤良(以下、近澤)Autifyの代表をしている近澤と申します。私はエンジニアとして10年以上開発に従事し、日本とシンガポール、アメリカの3カ国でソフトウェア開発を行っていました。その中でソフトウェアテストがグローバルで大きな課題である点に気づき、2016年、アメリカのサンフランシスコでAutifyを起業しました。

私は主に日本で活動していますが、日本とアメリカの両方に従業員がいて、アメリカと日本の両拠点で事業を展開しています。2019年2月には、BtoBスタートアップ向けのアメリカのトップアクセラレーター・Alchemist Acceleratorを、日本人として初めて卒業しました。

Autifyなら、誰でもノーコードで簡単にソフトウェアテストを自動化でき、メンテナンスもAIがしてくれます。ありがたいことに非常に多くの引き合いをいただき、ローンチから半年で、累計導入社数が100社を突破。コロナ禍でもどんどん伸びていて、もうすぐ累計導入300社を突破しそうな勢いです。

Anyplace Inc. Co-founder & CEO 内藤聡氏

内藤聡(以下、内藤)Anyplaceの内藤と申します。サンフランシスコで、ホテルを賃貸できるマーケットプレイス『Anyplace』を作っています。

私は大学卒業してすぐにアメリカのベイエリアに渡り、最初の数年は事業に失敗し続けました。でも、約4年前に『Anyplace』をローンチして、今では世界30カ国・300都市以上で利用可能なプロダクトになっています。よろしくお願いいたします。

Ramen Hero Inc. Founder / CEO 長谷川浩之氏

長谷川浩之(以下、長谷川)長谷川と申します。サンフランシスコで、ラーメンのミールキットサービスを提供するRamen Heroという会社を経営しています。大学を卒業後、フード系のスタートアップに創業メンバーとして参画。2014年にアメリカに渡って、内藤と同じように2つほど全然違う事業にトライして失敗した末に、Ramen Heroに行き着きました。

2017年にキックスターターでプロジェクトを立ち上げ、本当にラーメンのミールキットにお金を払って買ってくれる人がいるかどうかをテストしたのが、Ramen Heroの始まりです。その後、2018年末に​AngelPadというアメリカのアクセラレーターに応募して、合格。最初はカリフォルニア州だけでラーメンを販売していたんですが、2019年にようやく全米に展開できました。今はハワイとアラスカ以外の48州全てに顧客がいる状況です。

内藤さんと近澤さんにはアメリカで会ったのですが、近さん(編注:近澤氏のこと)は『蒙古タンメン中本』という辛いラーメンが好きで、一緒にアメリカで自作した仲です。内藤さんとは、私がアメリカに来てお金も繋がりもなかったときに、彼の小さなアパートメントに転がり込んで、ずっと小さなベッドで一緒に寝かせてもらっていた仲です。今日は楽しくお話できればと思って来ました。よろしくお願いします。

ジョニーありがとうございます。よろしくお願いいたします。こんな感じで和気あいあいと進めていければと思います。

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最もスケールの大きな市場があるのに、
なぜ世界からスタートしないのか?

ジョニーユーザーから事前にいただいたご質問をもとに、アジェンダを3つ作らせていただきました。

ジョニーこちらを上から順番に追いながら、膨らませるところはどんどん膨らませながら、みなさん同士で盛り上がっていただければと思っております。ではまず、なぜいきなり海外でスタートしたのかという理由を、それぞれ伺っていきたいと思います。長谷川さん、いかがでしょうか?

長谷川私は厳密には東京で1回起業していますが、「いつかアメリカで事業をやりたいな」という想いがずっとあって。大した理由もなく、アメリカで何か事業を1個成功させることを、夢見ていたんです、青臭い話ですけれど。大学生のときに『TechCrunch』などの記事を読んでいたら、ベイエリアやアメリカ発の会社の話ばかりが出てきていて、漠然と憧れていたんですよね。

なぜいきなりアメリカに行かなかったかというと、「英語が話せなくて腰が引けた」というのが答えです。しかし実際に渡米してみたら、大変だけれど、なんとかなることが分かりました。ですから、今は「いきなりアメリカに行けばよかったな」と思います。

ジョニーありがとうございます。もともとずっと海外でやってみたくて、2回目の起業で渡米されたんですね。

長谷川そうですね。最初の会社が、私の力不足もあってうまくいかなかったんです。貯金も大してなかったし、失うものもないと思って、アメリカに行ってみました。

ジョニー内藤さんはいかがでしょうか?

内藤私が、Uber、Spotify、Leap Motionなどを輩出したコワーキングスペース『ロケットスペース』で仕事をしていたら、「話をしたい」と言ってヒロくん(編注:長谷川氏のこと)が来まして。しかも、スタンフォードの文字が入ったパーカーを着てくるんですよ。ザ・観光客ですよね(笑)。

長谷川あるあるだよね(笑)。

内藤コワーキングスペース内を案内して、キッチンスペースに自由に飲めるコーラなどがあったので、社交辞令で「コーラ持って行ってください」と言ったら、常識的に考えたら1本だけ持っていくのに、長谷川さんは3〜4本をバッグに入れていて。まるで泥棒だなと(笑)。

帰り際に、「この辺でピザが出るミートアップはありますか?」と聞かれたので教えたら、長谷川さんはその後ミートアップに行って、無料のピザを食べて生き延びていたという(笑)。

長谷川アメリカには、良心的なミートアップやコワーキングスペースがたくさんあると学びましたね。

内藤迷惑ですよ。

長谷川挑戦者に優しいなと思って、感動しました(笑)。

ジョニーお二人は知り合って何年くらいになるのでしょう?

内藤6〜7年の長い付き合いですね。先ほどもお話ししたように、最初にお会いしたときは、この人には関わりたくないなと思っていたんですけど(笑)。でも何かやりたそうだったので、当時私が構想していた、アメリカで挑戦したい学生や起業家向けのシェアハウスを一緒にやろうかという話になって。

当時から長谷川さんは、日本人で初めてトップアクセラレーターのAngelPadに入りたいと言っていて。Y Combinator(以下、YC)はすでに日本人で入っている人がいるから、負けず嫌いな長谷川さんは、YCでは嫌だと(笑)。本当に有言実行して、そこだけはすごいなと思います。

長谷川“だけ”?(笑) 私たちと近澤さんは、どうやって会ったんでしたっけ。

近澤kiyoさん(編注:Chomp Co-founder and CEOの小林清剛氏。シリコンバレーで起業した日本人の一人)につなげてもらったのかな?

内藤小林清剛さんという、私たちの兄貴分のような存在がいまして。彼は面倒見が良くて、ベイエリアに挑戦したい起業家にいろいろとアドバイスをくれたり、助けてくれたりしているんです。皆が小林さんに相談しに行くので、近澤さんとはそこで繋がりました。近澤さんは徳が高くて、いろいろ優しくしてくれて。

長谷川いきなり海外でスタートできた理由として、内藤さんや小林さんが先に来ていたことは、やはり大きかったですね。「こうやって会社を立ち上げたらいいよ」と教えてくれたり、人も紹介してくれたりして。それが巡りめぐって、現在アメリカでやっているほぼ同い年の起業家が10名ほどいるので、先人がいたことは大きかったなと。

ジョニーありがとうございます。内藤さんはいきなりなぜ海外に?

内藤私はとてもシンプルに、「ベイエリアの起業家はかっこいいな」と思って憧れ、自分もその舞台でやりたいと思ったのがきっかけです。TwitterやSquareの創業者であるジャック・ドーシー氏や、同じくTwitterやMediumの創業者であるエヴァン・ウィリアムズ氏などの起業家がかっこいいなと思っていました。

日本にも孫正義氏や三木谷浩史氏などの起業家・経営者はいますが、シリコンバレーやベイエリアの起業家はそれと少しタイプが違うかなと。ベイエリアの起業家は、プロダクトにフィロソフィーを持って「ゼロイチ」に取り組んでいるのがとてもかっこいいと思っています。

ジャック・ドーシー氏なんて、TwitterとSquareの2社を作って上場させて、今はTwitterが約3兆円、Squareが約10兆円の時価総額です。一方の楽天は約1〜1.5兆円ほど。楽天13個分の事業を10年間で作っているのは、スケールがまったく違います。もちろん時価総額がすべてではないですが、一つの尺度として考えたときにすごいですよね。

日本人でベイエリアに移住して、大きな成功を収めている前例はありませんが、他の国で見たら、移民で大きな事業を作った人は多くいます。だから不可能ではないですし、難易度が高いからこそ人生をかける意味があると思って来ましたね。

長谷川グローバルな生き方はいろいろとあって、事業やファウンダー次第でベストな場所は変わる気がしています。

私はアメリカで売りたい商材を扱っているのでアメリカにいますが、近澤さんのAutifyは、日本にいてもグローバルな引き合いが来ているので、日本から世界に出ていけるでしょう。いろいろな世界の狙い方があると思います。

ジョニー近澤さんは、自分は2人とは毛色が違うとおっしゃっていましたが、なぜ海外でスタートしたのかを伺ってもいいですか?

近澤先ほど2人が言っていたように、グローバルの市場が一番スケールの大きい舞台なので、逆に「なぜそこから始めないのか?」という想いがありました。海外のVCは、日本のスタートアップに基本的には投資しません。だったらアメリカからスタートして、アメリカの『TechCrunch』に載るような事業の進め方をしたいと思っていました。

私はずっとエンジニアでしたが、「起業して世界中の人が使うものを作りたい」という想いがずっとあって、海外からスタートしないとそれは達成できないなと思ったんです。

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数兆円規模での上場がデフォルトのアメリカ、
数千億円規模が基本の日本

ジョニーでは次のアジェンダに進ませていただきます。海外で成功したサービスやビジネスモデルを日本でいち早く展開し、先行者利益を得る「タイムマシン経営」という手法がありますよね。現地に関わっていらっしゃる皆さんから見て、本当に日本は遅れているのか、それとも進んでいるのか。リアルな感覚をお聞かせいただけますか?

内藤日本とベイエリアでは目指しているゴールが違うから、やり方も異なると思っています。日本では東証一部や東証マザーズに、数百億〜数千億円規模で上場することがゴールとされていることが多く、日本のVCもそこに期待値を置いています。

しかしアメリカはVCのファンドサイズが大きいので、もっと大きい事業を作らないと商売にならない。だから数百億円や数千億円の時価総額は当たり前で、できれば数兆円規模で上場してほしいと思っています。

2020年にAirbnbや料理宅配サービスを手がけるDoorDashが上場しましたが、数兆円規模の時価総額が付いています。これがアメリカVCの作ってほしい期待値なんですよね。だから日本とアメリカではやり方が違ってくるという話です。

日本はアメリカにおけるシリーズC前後で上場できるので、例えばアメリカにあるモデルをもとに日本で起業して、300億円から1,000億円で東証マザーズに上場するなら、それは正しいアプローチなんです。リスク下げて、すでにPMF(プロダクトマーケットフィット)されているものを日本でやる。

それを「ゼロイチ」と呼んでいいのかはわかりませんが、投資家は安心して任せられるので、経営者としては正しい選択だと思います。アメリカの成功事例をベースに事業を始めて、後はマーケティングの力によって伸ばし、そして上場するやり方ですね。

ただアメリカでは本当にゼロイチでパクるものがないので、PMFに達成しないまま終わる会社がほとんどなんです。そうした厳しい環境だからこそ、PMFに達成までのフレームワークややり方が、日本よりも知見として多く貯まっている。それが大きな違いだと思います。

ジョニーありがとうございます。近澤さんはご意見ありますか?

近澤日本が遅れているとは思っていなくて、海外に出ていけるプロダクトは十分にあると思います。出ていけない理由は、単純に海外のマーケットを知らなかったり、情報が取れていなかったり、現地のことがわからなかったりするから。それは英語でのコミュニケーションに起因する部分が大きいと思います。

私も英語は苦手だったのですが、現地に行ってみたら「意外と戦えるじゃん」と思いました。ですから、おそらく現在地が見えていないだけだと思います。エンジニア業界でも日本には本当に優秀な人がたくさんいるので、そのマーケットをもっと理解すれば、海外での戦い方はあると思っていますね。

長谷川近澤さんは今でこそ日本ベースでやられていますが、しばらくシンガポールやアメリカにいて、Alchemist Acceleratorなどのトップアクセラレーターなどで、現地のファウンダーが本気でグローバルを取りに行っていることを体感しています。その繋がりがあるからこそ、今その先に行けているんじゃないかなと思うんです。

内藤さんも、著名投資家のジェイソン・カラカニス氏(以下、ジェイソン)が開催しているアクセラレータープログラム・LAUNCH Acceleratorに日本人で初めて行った人。本気でやってやるんだ!というのが、ジェイソンや著名な投資家にも伝わったからこそ、一歩踏み出せたと思います。

日本が遅れているかどうかは、私が日本にいないのでわかりませんが、一概にそうとも言えないんじゃないかなと。Ramen Heroには、バンクーバーベースで働いている日本人エンジニアがいますが、彼は英語がまったくできない状態でジョインしたにもかかわらず、対等にアメリカ人スタッフと対等に仕事をしています。少なくとも個人レベルでは、全然やれるなと思います。

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シリコンバレーにたくさん蓄積されているノウハウの集めかた

ジョニーありがとうございます。内藤さんがおっしゃっていた「PMFのノウハウが米国中心に貯まっている」という話を掘り下げたいのですが、PMFに限らず、シリコンバレーやアメリカのノウハウを効率的に摂取する方法はありますか?

内藤ブログで公開されているノウハウがたくさんあるので、英語で読むか、DeepLで翻訳して読めばいいと思います。英語の文献なら、検索すればたくさん出てきますね。自身の事業に近しい領域に詳しい投資家やプロダクト開発のトップを担っていた人などが発信しているブログを読んだり、Podcastを聞いたりすればいいと思います。

長谷川内藤さんが好きなメディアは?

内藤私はマーケットプレイス事業なので、もともとAirbnbのトップだったレニー・ラチスキー氏のメルマガや、ベンチマークキャピタルのサラ・タベル氏のブログなどをよく読んでいます。

長谷川あと、 First Round CapitalというVCが出している『FirstRound.com』というサイトに、ものすごい数の記事が貯まっています。検索もかけられるので便利です。例えばハイアリングや採用で困ったことがあると、ハイアリングに関する記事を検索して4〜5本を読むと、アメリカでの採用の感覚が掴めてます。あとは、スタートアップのピッチやレビューの内容が公開されている『FirstRound Review』もおすすめです。

元RRE Venturesのスティーブ氏がやっている『Founder Library』にも、あらゆるカテゴリーの記事が溜まっているので、私はよく使っています。

ジョニーAutifyはBtoB領域だと思いますが、近澤さんがよく読む媒体はありますか?

近澤SaaSコミュニティ・SaaStrのブログや、投資家クリストフ・ジャンズ氏のブログなどはよく読んでいます。SaaSは「ここは押さえておくべき」といった決まりごとが結構あるので、そうした知見は探せばいくらでもあると思います。

ジョニー内藤さんは、日本人がアメリカで起業するときにどうしたらいいのか、資金調達の方法も含めて一定数の知見がたまってきたとおっしゃっていましたよね。

内藤かなり体系化されてきたと思います。まず現地に行って事業を考え、2年ほど試行錯誤しながら頑張って作っていけば、だいたいみんなアクセラレーターに入れていますね。私も近澤さんも長谷川さんもそうですし、私たち以外の同じようなスタートアップも同じです。

アクセラレーターに入って、現地から資金調達を行うところまでは体系化できているので、ベイエリアで起業のスタートラインには立てる人は増えてくると思います。あとはそこからシリーズAやシリーズBに進み、さらに大きな事業を作っていくことには、私たちもチャレンジしているところです。意欲がある人なら、かなり起業しやすくなっていると感じますね。

長谷川アクセラレーターに入って、内藤さんも泣かされていたもんね。

内藤私が卒業したジェイソンのLAUNCH Acceleratorはかなり厳しくて、毎週ジェイソンが知り合いの投資家を3〜4人連れてきて、トップのVC投資家に対してピッチさせられるんですよ。それで質問を受ける、100本ノックみたいものがあって。私は当時英語もそこまでできなかったので、しんどかったですね。

しかも残酷なのが、1周ピッチが終わったら投資家が投票して、誰が良かったかが決められて、それを見せられるんですよ。私は1回目のピッチで1点も入らなくて、泣きそうになりましたね。でもそこから頑張って、小林さんにもいろいろとアドバイスをもらって、最後は最多得票を得られたので嬉しかったです。

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「英語が話せない」は言い訳にならない時代に

長谷川最近、LAUNCH Accelerator出身の後輩もできたよね。

内藤オンライン環境での常時接続サービス『Remotehour』を立ち上げた日本人の山田俊輔さんが、LAUNCH Acceleratorに入ったんです。彼は私よりも英語ができなくて、ピッチのときに通訳が付いているんですよ(笑)。まるで海外から来たスター俳優みたいになっていて。通訳がついたピッチなんて初めて見ました。

最後のDEMODAYのオンラインピッチでも、通訳の人がピッチして質問に答えてと、ほぼ乗っ取られてましたね。山田さん一言も話していない、みたいな(笑)。

だから、ハードルはすごく下がりました。ある意味、山田さんのおかけで「英語ができないから」という言い訳ができなくなりましたね。

長谷川それでも、プロダクトがいいから受け入れられている訳ですよね。

内藤あとやる気ですね。山田さんはベイエリアに来てから、そのやる気がとても買われていて。ジェイソンがそういう人を好きなのもあります。普通は事業がうまくいかないと日本に帰ってしまうのに、山田さんはショッピングモール内のフードコートの残飯を食って生き延びた、異常なほどの執念がある。それがジェイソンに伝わったんでしょうね。「こいつなんかやばそうだな」と。やり続けるのは大事ですね。

近澤英語は本人が話せた方がベストですが、英語を言い訳にするなというのもわかります。行動することでついてくるものがありますからね。日本でいくら準備しても、いざ行ったら実質ゼロスタートということは多いので、とりあえず出ていくと。

ただ英語ができないことによって、情報が取れずマーケットを知ることができないこともよくあります。英語ができないことで、日本と海外とで差が生まれているのも事実だと思います。

ジョニーAutifyさんの日本オフィスも英語が社内公用語と伺いましたが、誰がいつグローバルに出ていっても問題がないように、そうした環境になったんですか?

近澤そうですね。日本発で全員が日本語を話しているような組織が、海外で成功できるとは思えないんです。日本語しか話さないスタートアップをGoogleが買収するかというと、たぶんしないので。言語バリアをなくして、みんな英語で話す、英語で考える、英語のマーケット情報を知るようにしないと、結局勝てないと思います。ですから、Autifyは国内外問わず、全員英語で話す文化があります。

ジョニー言語以外の面で、日本人や日本拠点のスタートアップがグローバルで勝っていくためのポイントはありますか?

近澤日本から世界へ出た場合の失敗事例ばかり、多く語られがちな部分がありますよね。どうせ行けない、やめといた方がいいなど、何か圧力みたいなものがある。ヨーロッパ拠点でグローバルで成功しているスタートアップはたくさん事例があるのに、そこと何が違うんだろうという話で。

日本から外に出て失敗するのは、マーケットの状況をよく知らないでとりあえず出ていき、できなかったから帰ってくるスタートアップが多すぎるからだと思っています。しっかり根を張って事業を展開すれば成果が出たのかもしれないのに、その前で諦めるスタートアップが多い気がしていて。しっかりやり続けることや、現地の状況を知ることが重要だと思います。

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ラーメン、ウォッシュレット……
アメリカに隠された、日本人が勝ちやすい成長領域

内藤結局、どこにゴールに置くのかが重要かなと。日本で事業を作って、東証一部やマザーズに上場させるのも意味があります。それが良い悪いではなくて、何がしたいのかが重要。本気で世界中で使われるプロダクトを作りたいんだったら、私はベイエリアに行くのをおすすめしますし、近年はとても活動しやすくなっていると思います。

アメリカにはアクセラレーターが多いので、日本人が現地でスタートラインに立ちやすくなっています。今後も海外起業する日本人がどんどん増えていくと思いますし、その中で大きく成功する人も出てくるでしょう。

そして、アメリカに来ると、マインドセットや環境が変わる。これが一番大事だと思っています。長い目で考えたら、事業をやり続けていると成功の確率は上がってくるはずです。仮にAnyplaceが失敗しても、もう一回アメリカでチャレンジしたら、もっとたくさんの投資が早く集まって、いつかは大きな事業を作れるんじゃないかと本気で思っていて。

例えばZoom Video Communicationsのエリック・ヤン氏は、年を重ねたのちに中国から移民してきているので、英語はそんなに上手くないです。私よりは上手いですが。それでもあれだけ大きな事業を作っているので、そういう事業を作れる日本人も出てくるんじゃないかなと思います。

10〜20年後には、アメリカで起業することが、いまよりも当たり前になっているはず。現状は「アメリカに行って起業するのはなぜ?」と聞かれますが、今後は「なぜアメリカでやらないの?」と言われるようになっていくのではないかと思いますね。

長谷川見方によっては、日本の方が進んでいる領域も結構あると思っています。「食」などはその最たる例です。ラーメンブームはアメリカでもしっかり続いていて、毎年どんどん新しいラーメン店が増えています。コロナ禍でもブームはおさまりません。でも、その大多数は、残念ながら絶対的なクオリティがまだまだ高くない。それで勝機を見出して、Ramen Heroをはじめたんです。

ほかにも、日本人ではなくアメリカ人のファウンダーが抹茶ドリンクを作って、それがD2Cブランドになることが増えています。その中には、日本人がアメリカで立ち上げて、かなり伸びているブランドも出てきているんです。

抹茶で言えば『Cuzen Matcha(空禅抹茶)』や、モダンな和菓子を売っている『Misaky.Tokyo』などがあります。あと酵素ドリンク。酵素は日本ならではの文化ですが、酵素ドリンクのD2Cをやっている『R's KOSO』などが出てきています。

アメリカの既存で出回っているプロダクトのクオリティは、正直そんなに高くないと思うんですよ。もう5〜6年住んでて。食べ物は日本の方が圧倒的にレベルが高いし、食べ物以外の商材もとてもクオリティが高い。TOTOのウォシュレットは日本でよく使われていますが、最近になって『Tushy』というウォシュレットのD2Cブランドも出てきています。

「日本の優れたプロダクトが出てきたら勝てるじゃん」といつも思うんです。むしろ、こっちで買いたいので、出てきてほしいです。勝てる商材や事業のネタは、無限にあると思います。とくに、消費財に関しては。自分たちがナンバーワンになり得る領域を探して起業するのが、良いやり方かなと思います。

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シリコンバレーには「良い起業家には張り続ける」投資家がいる

ジョニーありがとうございます。では、視聴者の方からの質問を1つ紹介します。「『この人はすごいな』と思う起業家に、海外で会ったことはありますか?」。

内藤日本と違うと思ったのは、皆がゼロイチの事業を作っていることです。良い悪いではなく、日本のスタートアップのプロダクトは、同じようなものがアメリカにあるケースがほとんど。

ただアメリカのファウンダーは本当にゼロイチで作っていて、彼らのフィロソフィー、なぜこれをやっているのか、なぜこれが必要だと思うのかといった話がよく語られていて面白いです。

ジョニーお二方も何かエピソードはありませんか?

近澤Alchemist Acceleratorの同期は、年上の人が多かったです。日本だと若い人が起業するケースが多い気がするのですが、Alchemist Acceleratorでは60代の人もいて。BtoBは、わりとシニアな人が起業していくのがスタンダードになってきてるのかなと思いました。

ジョニーありがとうございます。

内藤あと、先程から何度も話題に挙がっている、エンジェル投資家のジェイソンはおもしろいなと思いました。UberやRobinhoodの初期投資家なのですが、彼は起業家がもし失敗しても、その人がいいチャレンジを続けていたら、次の会社にも投資するって言っているんです。

その理由を彼に聞いたら、Uber創業者のトラヴィス・カラニック氏のエピソードを教えてくれました。彼はUberの一つ前の会社Scourで、複数の企業から訴えられて失敗しているんですが、Scourに投資した投資家はUberに誰一人として投資しなかったらしいんですよ。その中には、マーク・キューバン氏という有名な投資家もいたんですが、彼はUberをパスしたんですよね。

それを見てジェイソンは、仮に前の会社で事業が失敗しても、その経験から起業家は成長すると気づいたのでしょう。だから「良い起業家には張り続ける」が、投資家として最終的にリターンを出す彼の鉄則、プリンシパルだという話で。とてもおもしろい発想だなと思いますし、それがジェイソンがジェイソンたるゆえん、トップ投資家でいる理由だなと印象に残っています。

長谷川ジェイソン、寿司が好きだよね。

内藤銀座の寿司が好きって言っていた。日本が好きで、トンカツやカツサンドにハマっていました。前に日本に来たときにもどこに行っても「カツサンドはあるか」と聞いていましたからね(笑)。

長谷川やっぱり日本人はジェイソンが主催するLAUNCH Acceleratorにアプライするといいのかもね。

内藤いいかもね、印象良いと思う。

近澤日本好きだから。

ジョニーではお時間が来てしまいましたので、最後にご登壇いただいた皆さまから、視聴者に向けてのメッセージをいただきたいと思います。

長谷川日本人や日本から出てくるアイデアには、世界でナンバーワンになれるものがたくさんあると思います。本当に自分がナンバーワンにできると信じられるものなら、海外でチャレンジしていけるはず。もし本気でチャレンジしたい方がいたら、ご連絡いただければ、何か力になりたいと思います。ありがとうございました。

内藤私もいま挑戦中なので偉そうなことは言えないですが、ベイエリアでも日本人が起業しやすくなっているので、世界中で使えるようなプロダクトを本気で作りたい人は、どんどん挑戦してほしいと思います。自分も良い事業を作れるように頑張るので、一緒に挑戦しましょう。10〜20年後には、ベイエリアで日本人が起業するのがもっと当たり前になると思うので、まず私たちが成功しなければと考えています。頑張ります。

近澤私たちAutifyも挑戦中の身ではありますが、日本人の起業家が世界で成功する、日本から世界で成功するという事例がまだ少ないので、それを私たちが実現するために、組織作りなどさまざまなことにゼロから挑戦しています。メンバーも絶賛採用中ですので、ぜひご興味ある方がいらっしゃいましたら、Autifyのホームページを見てご応募いただければと思います。本日はありがとうございました。

こちらの記事は2021年03月02日に公開しており、
記載されている情報が異なる場合がございます。

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執筆

金指 歩

フリーライター。信託銀行や証券会社、ITベンチャーを経て現職に。主に個人・法人のインタビュー記事、金融関連記事を執筆。

編集

小池 真幸

編集者・ライター(モメンタム・ホース所属)。『CAIXA』副編集長、『FastGrow』編集パートナー、グロービス・キャピタル・パートナーズ編集パートナーなど。 関心領域:イノベーション論、メディア論、情報社会論、アカデミズム論、政治思想、社会思想などを行き来。

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